やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて30年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

高坂正堯著「海洋国家日本の構想」ー3つのショック

『インド太平洋開拓史』を書きながら再読したい本が山ほどあった。本棚から取り出した本は何十冊とまだ棚に戻らずに部屋に散らばっている。

博論を書いた後に数百冊の本を処分して手元にあるのは死ぬまでとっておきたいと思った本だけだ。

読まずに、読めずにいた本が白石隆著「海の帝国」と高坂正堯著「海洋国家日本の構想」だ。

「海の帝国」にあった信夫清三郎著「ラッフルズ伝」を読み出して海洋国家日本が、そのままだったが、昨日読み終えた。

いろいろとショックな事があった。

まず本を開こうとしたら折りたたんだ新聞の切り抜きが落ちた。産経2008年6月21日の昭和正論座に掲載された高坂先生の昭和48年の論考である。線が引いてある。2008年6月、私はミクロネシア海上保安事業を一人で立ち上げ始めた時なのだ。ミクロネシア地域は10年以上特別な関係を築いていたので私が動けばこの事業は成功することが、自分でわかっていた。そうなればいつか日本の軍靴の足音が、自衛隊が出てくる事になる。今思い出すと笑ってしまうような悩みだが、本当に、真剣に、悩んでいたのだ。

そんな私の背中を押してくれたのが渡辺昭夫先生の存在であるが、この高坂先生論考も参考にしたのである。その部分を下記に写メしておく。

2つ目のショック。「海洋国家日本」は何度か読んだはずなのだが中身の印象が薄い。エリザベス女王の非英雄性だけは強く印象に残り、これは実践で使わせていただいている。今回気がついたのが高坂先生、この論文を29歳の時に書いているのだ。私が生まれる前!思想や文章、論考というのは年齢、すなわち経験が反映される。いくら優秀でも29歳の若造の文章の厚みには限界がある。しかし今回読んで中国の脅威はそのままだし、海洋国家日本の道しかないってのもそのままだし、全然古さを感じさせない。

3つ目のショック。高坂先生の先生は田岡良一だったのだ。私は国際法、そして南洋の委任統治制度のことに関心をもたなければこの田岡先生で出会っていなかった。田岡先生の本もまだ途中だ。

内容のこともメモしたいが、これは後で追記します。ラッフルズと田岡先生、そして矢内原先生も待っている。

 

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構成

第1章 日本の国際政治的位置

日本は西洋か、アジアのメンバーか。興亜、脱亜、侵亜かと書いているところが面白い。

太平洋戦争のもっとも簡単で重要な点は米国海軍が日本海軍を打ち破った、という事実。

 

第2章 戦後日本の功罪

経済と内政にだけ力を注いできた。軍事力の必要性。

 

第3章 歴史の教訓

エリザベス女王の非英雄性と英国の悪名と秘かなる賞賛の的となったイギリス外交

日本にはドレークや、クック船長がいなかった。王の支援をうけないあぶれ者が海に乗り出した。軍部は満州に出たあぶれ者の心情をよく理解していた。その共感が国民の支持を軍部に与えた。

日本は海洋国家として独自の力を持たなければ、対米従属か、対中従属になってしまう。

 

第4章 海洋国のための施策

中国外交は遠交近攻

日本がすべきは海洋開発と途上国支援

慎重さと冒険 非英雄主義と英雄主義 を繋げる政治技術が必要

海洋開発については海洋上条約の動きを予想した意見が述べられている。