『国際海洋法の現代的形成』の第3部海洋生物多様性と海洋保護区
第8章 国際法における海洋保護区の意義 p. 247-304 この章が発表されたのは2008年。比較的最近。BBNJが大きく動き出した頃、か。
p. 247 MPAとは海洋の特定区域において人間の活動を規制しようとするものである。 守るのは、生物資源、生物多様性、生態系、海洋環境。(人間は?環境法の多くが目的を人間にしており、環境そのものを目的にするのはマイナー、とこれは松井先生の環境法の本にあった。あとで再読しよう)
p. 248~ ただしMPAには統一された定義はなく。アメリカ、オーストラリア、IUCN、などん例が挙げられている。日本のMPAは140あるとのこと。(数だけでなくその歴史とか、定性評価も必要だよ。日本の鞆の浦なんか数千年の歴史をもつMPAだよ。これぞMPA)
p. 253 南氷洋保護区は 1992年のフランス提案。フランスの海洋政策重要かも。。
p. 255 南極は誰のものでもないから公海になる。南極特別保護地区とは環境上、科学上、歴史上、芸術上、原生地域として顕著な価値のある、海域を含む地域。(芸術上、ってなんだろう?)
p. 256 ここから ラムサール条約、ユネスコ世界保護遺産、MARPOL、と事例が紹介され、UNCLOSに。
P. 262 UNCLOSにMPAは書かれていないが関連条項がある。
192条 国の海洋環境保護義務
194条 海洋環境の汚染を防止し、軽減、帰省する措置
211条 船舶からの汚染防止
118条 公開における生物資源の保存管理について国家間の相互協力を規定
145条 海洋環境を効果的に保護するための国際海底機構
p. 264 生物多様性条約CBD にはMPAの表記はないが、Marine and Coastal Protected Area MCPAという表記がある。
p. 266 ここからすでに締結、合意されているMPA関連の地域条約が紹介。 バルチック海のヘルシンキ条約。地中海のバルセロナシステム。EUの保護区。
p. 279 公海のMPAの議論で重要なのが深海底も含まれることも重要。アジェンダ21とWSSDそしてシルビア・アールの存在。
これ以降、MPAとBBNJの議論になるので全て重要。CBDがUNCLOSに侵入してきている様子がわかる。CBD、環境法益の議論も必要だ。これは兼原論文にあった。
p. 292 MPAが公海に設置されることの法的問題が、合法説、違法説、折衷説の順に事例をあげながら紹介されている。
p. 295 違法説では、公海のMPAはUNCLOS89条(公海に対する主権主張の禁止)と137条3項の深海底のその資源の主権、占有などの禁止)
p. 299 この節は重要だ。「海洋保護区の国際法的インパクト」と題されている。アフリカ諸国が200カイリを主張して、2年間であっという間に多数派を形成し、沿岸国が領海外で資源管轄権を持つという主張が公海の原則に抵触するという問題を検討する余地もなかった。(これ、大きい問題だ。法的議論が、途上国の数の力で無視される、ということだ)
p. 300-301 田中先生はMPAの主張は海洋自由の思想に対する新たな批判と主張し、ご自分の先生である高林秀雄と小田滋の議論を紹介している。高林は海洋自由の原則は自由放任と自由競争の資本主義高揚時代の国際制度であった、と。他方小田は公海での水爆実験の合法性を論じ「公海自由の原則は歴史的には航海や漁業などの利益を保護するものとして、いわば交通もしくは生産の手段として海洋利用という限定的な目的のため… 何をするのも自由であったわけではなく…」
p. 304 MPAの課題は航行、漁業の自由といった安定的に確立した公海の自由にも影響を及ぼすこと。(田中先生は公海のMPAの実質的問題としてそれが科学的なのか?どのように管理するのか?評価をどうするのか?といった議論が全くない。国際法だからしょうがないが。本当に海洋生物多様性って危機状態なの?でも中国がどんどん採取してるよね、きっと。)