やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

太平洋諸島フォーラム総会開始とキリバスの離脱

護衛艦きりさめがパラオに入った日、第51回太平洋諸島フォーラムがフィジーで開催される。同時にキリバス大統領がフォーラム離脱の発表をした。ミクロネシア5カ国がフォーラムを離脱するという話が、やっと先月のフィジーでの会合で解決された矢先である。

Exclusive: Pacific Islands Forum crisis as Kiribati withdraws

キリバスのマーマウ大統領が示した理由は明確である。

1フォーラムのヘンリー・プナを事務総長の職をミクロネシア地域に譲るという条件が満たされていなかった。

2 先月のスバ協定に基づいて行われた改革パッケージについても懸念を示し、キリバス大統領は、自国は協定に署名していない。

3 フォーラムに戻るためのミクロネシア大統領サミット合意がなかった。

4 大統領はまた、キリバスナショナルデーと一致するため、フォーラムの延期を要求したが、この要求は決して考慮または認められなかったと述べた。

2019年、中国に外交関係をスイッチしたキリバス。注目されている中国の開発の一つがインド太平洋司令軍があるハワイにも近いカントン島の「観光開発」である。また米国は中国牽制のためのフォーラム支援姿勢を明確にした。即ち太平洋諸島フォーラムは中国を牽制する場所になってしまったのだ。豪州NZが加盟国、米中日は対話相手国である。しかしスバ協定の改革案では、フォーラム機能が北太平洋、すなわち米国の軍事戦略的地域、ミクロネシアに移る。

マーマウ大統領のこの唐突な行動はキリバス国内からも疑問の声が出ている。

Kiribati exit from Pacific forum 'out of order' - former president | RNZ News

野党指導者であり初代大統領イエレミア・タバイ大統領は、キリバスがフォーラムを離脱したことをメディアから始めて聞いて驚き、国民は知らないと述べている。

キリバスでは最近憲法の危機をめぐる事件が起こっている。

Kiribati suspends its chief justice over article | RNZ News

キリバスの最高裁判事を務めているニュージーランドの判事が停職処分を受けたのである。「Judicature」に掲載された論文で、最高裁判事ヘイスティングスは、法の支配を損なうと思われるキリバス政府の動きを批判したのだ。英連邦弁護士協会などの国際的な法律団体は、キリバス政府が司法の独立性を損なっていると非難したこの事件は野党党首(女性)の夫である豪州人ランボーン判事が帰国できず、職も失った事件である。

先日ナウル代表が台湾人専門家を代表団に入れて国連海洋会議に出席できなかった事件があったが、小島嶼国どこも国内の人材だけでは間に合わず、外国人専門家を雇う。問題は外国人判事が島のルール(犯罪よりも国家秩序が優先する)に従わないと更迭されるケースがある。