やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

OurWorld 2.0 ソーシャルメディアによる海洋教育の可能性

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(写真: 足袋抜豪)  

ブログで紹介した国連大学メディアスタジオ所長、ブレンダン・バレット博士一押しの事業が、同スタジオが制作するウェッブマガジン、OurWorld 2.0だ。  

一作品5-7分のビデオ番組がウェッブ上に公開されている。現在36本の作品が掲載されているが「生物多様性」「気候変動」等環境問題を広く扱っている。  

パプアニューギニア、カーテレット島の環境難民を取り上げた作品は、海面上昇と言えばキリバス、ツバルと刷り込まれてきた頭に、同様な問題が太平洋のあらゆる離島にあることを気付かせてくれる。  

「一見は百聞にしかず」

できれば現場に足を運び、現状を見て、またそこに住む人々から話を聞いて理解することが一番だと思うが、全員がこのような経験、体験をすることは難しい。文章は書き手のバイアスが掛かるが、映像が伝える情報は目と耳から入る一次情報に近い。立場が明確な環境NGOの情報は、私などは時々押し付けがましく感じることがあるが、国連大学という比較的中立的な立場で制作されており、観ていてバイアスを感じない。  

6、7分と言う長さは、一般の人が観るにも適度な長さであるし、学校の授業で使用するのにもちょうど良い長さだ。このような無料で質の高いメディア資料が海洋教育にも使用できるのではないだろうか?  

バレット所長はソーシャルメディアの在り方にさまざまに挑戦する。「国連」「学者」というイメージとはほど遠い、自由な発想の持ち主である。 時々、過激でもある。  

「現在のマスコミ報道はなぜ気候変動問題のマイナス面にばかりに焦点を当て、問題をどのように対処するのかについては注目しないのか?」  

賛成だ。温暖化があろうがなかろうが海面上昇があろうがなかろうが、脆弱な環境に住む人々に、いかに「共感」と「行動」を個人が起こせるか(政府ではなく)、が重要だ。OurWorld2.0から海洋問題に関連するビデオを3本推薦する。

「環境難民を 
助けるには?」 「パプアニューギニア環礁、急速に沈む」 ここしばらく、カーテレット諸島の住民は、この注目の話題でマスコミを賑わせている。

「日本の伝統を守る海女たち」 海の民の子孫たちは共同で取り決めたルールに基づき海の資源を持続可能な状態で管理し続けている。   

「豪州ケープヨーク・コワンヤマの海面上昇」 オーストラリアの熱帯地域、クイーンズランド州の海岸地域に居住するアボリジニ共同体「コワンヤマ」。海面が上昇したら、彼らはどこに行けばよいのだろう?