やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

歴史教育

「先生の言うことを信じてはいけませんよ。」

そう先生は言って、ニュージーランドのある高校の歴史授業が始まった。

知り合いのお母さんから聞いた話だ。

その歴史の先生は1年間通じて、ナチスの話を取り上げたらしい。

生徒はナチスの将校達の名前を全て覚えるほどに詳しくなった。

「偏った歴史観を押し付けない、というけど、偏ってないかしら~。」

と、知り合いは心配を装っているが顔は笑っている。

日本とニュージーランドを行き来する女医さんだ。

私の高校の歴史の先生も変わっていたかもしれない。

教科書は使わなかった。『中世の光と影』堀米庸三著)を1年間読んだ。

歴史教科書が大嫌いだった私には新鮮な授業だった。でも追いつけなかった。

「客観性」のみで歴史を記述しようとした試みをE.H.カーは否定している。歴史には著者の「主観性」が含まれており、それを見極めることが重要である、と。

「先生の言うことを信じてはいけませんよ。自分で考えなさい。」

という先生の教えは正しい。

(文責:早川理恵子)