やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「守りのJAL、攻めのナカムラ」

 2010年11月のパラオ出張では、現場だからこそ知り得た情報が山ほどあるが、日本ーパラオ直行便就航のニュースには驚いた。

 しかも週4便である。それを可能にしたのがあのナカムラ元大統領であった。

 

 日本からパラオに行くにはコンチネンタルミクロネシア航空でグアム経由しかない。早くても10時間はかかる。しかも帰り便は朝の2時頃出発で、グアムでの乗り継ぎが地獄のようだ。

 グアム空港では、米国のテロ対策強化で、行きも帰りも長蛇の列に並び通関と手荷物検査を通過しなければならない。

 

 これが直行便だと5時間である。繰り返すが、しかも週4便である。

 2002年に念願の成田ーパプアニューギニアの直行便を就航させ、国交省との悪戦苦闘の8年を経てやっと週2便にしたエアニューギニ島田謙三日本支社長の苦労話をよく伺っていたので、俄に信じ難かった。

 

 パラオ側はいったい誰がこんなミラクルを可能にしたのであろう、と不思議も思っていたら初代大統領で今は手広くビジネスを展開するナカムラ氏だった。

 笹川陽平をペリリューに案内していただくことになっており、早目に桟橋に行くと、

「デルタとの打合せが長引いて、遅れるかと思ったよ。」

「えっっ、もしかして直行便はナカムラ大統領が仕込んだんですか?」

「そう。JALのチャーター便もあったけど、JALはリスクを取れなかったね。」

 

 世界のダイバーが憧れる、パラオ。

 日本からはJALが定期的にチャーター便を飛ばしていた。しかし、日本からしか乗れないし、日程は決まっているし、自由は利かない。アドバンテージは、旅行会社が席を全部買い取るのでJALの損失がないことだが、それ以上の発展は望めない。出張なんかには絶対使えない。

 

 今、ミクロネシア地域はグアムの軍事基地開発で地域全体が経済チャンスを狙っている。労働人口の移動は2014年に向けてうなぎ上りだ。

 こんな時JALの元気がないのが残念である。

 

 グアム基地特需。議論はあると思うが、少しでも日本のタックスペイヤーが投資した6千5百億円の見返りが日本経済にあるとよいのだが。

 その意味でもパラオー日本の直行便が、日本経済にとってもチャンスとなって欲しい。