やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

アメリカの太平洋ー海のウルカヌス お復習い

 太平洋といえば米国である。

 このブログに「海のウルカヌス」という副題をつけて太平洋を巡る米国の動きを書いてきた。

 ウルカヌスとは − 『ウルカヌスの群像―ブッシュ政権とイラク戦争』(ジェームズ・マン著、渡辺昭夫監修訳)から拝借させていただいた。

 ここでちょっとおさらい、というか米国の太平洋への関与を歴史的にまとめておきたい。

 まずは、ペリーやメルビルが太平洋にやってきた拡張主義時代が1840年代から始まる。ヨーロッパ諸国より一歩遅れた拡張だ。この時に鳥のウンチ法や、軍事力でハワイ、米領サモア等、太平洋の島々を獲得した。第一次ウルカヌス期と呼ぼう。

 次が1900年以降の孤立主義時代。真珠湾攻撃までの約40年。その間にハリマン事件やヤップの海底ケーブル事件があり、反日感情が高まる。それ以前のハワイ併合の際に東郷平八郎が軍艦をハワイに送り米国を牽制した事も、ルーズベルトの怒りを買った、との記述をどこで読んだ。この時期の米国とドイツの経済的関係は重要そうだ。ヤップの海底ケーブルがそのことを物語っている。

 次が太平洋戦争から冷戦終結までの50年。再びウルカヌスの時代である。第二次ウルカヌス期。

 次が1990年以降の一局支配の時代で、アーミテージがキャンベラで述べていたように、米国は太平洋の事なんか関心ない、と言っていた次期。

 そして第3次ウルカヌス期である。昨年、ヒラリー長官が「太平洋の世紀」とうたい、キャンベラ国務次官補がアイランドホッピングをし、米国の太平洋へのコミットメントを明確に示した。正確には2001年の多発テロ辺りから米国は太平洋のミクロネシア諸国に無法地帯がある事に気づき、あまり戦略的ではないが安全保障を強化し始めている。

 さて、この第3次ウルカヌスがどんな姿になるのか。できれば「火之神」のウルカヌスではなく、穏やかな神様になって欲しい。

(第一次ウルカヌス期 拡張主義の時代 約50年)

1851年『白鯨』メルビル

1856年 グアノ島法 鳥のウンチ島法

1894年 パイナップル大統領 ハワイ共和国

1898年 米西戦争(フィリピン、グアム獲得)

1899年 米領サモア獲得

孤立主義の時代 約40年)

1904-05年 日露戦争アメリカの鉄道王エドワード・ハリマン)

1914-18年 第1次世界大戦(ヤップの海底ケーブル)

1929年 ウォール街大暴落

(第二次ウルカヌス期 軍事的拡張時代 50年)

1941年 真珠湾攻撃

1946-1958年 ビキニ環礁核実験

1959年 ハワイ、州となる

1960年代 ケネディの太平洋

1970-80年代 冷戦の太平洋

(一局支配の時代 20年)

1990年代 アーミテージの太平洋知らん

(第3次ウルカヌス期 どんなウルカヌスとなるか)

2001年 同時多発テロ

2011年 クリントン長官の太平洋の世紀、キャンベル国務次官補のアイランドホッピング