やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

昼食雑談ー寺島運営委員長との面談

 昨年、約半年位だが、米国のパネッタ長官の動きをフォローし、米軍が5対5から4対6の割合で太平洋へのプレゼンスを高めて行く事を知った。続いてホノルル出張ではそれを証明するかのようにPACOMの強化拡大と、実際には漁業監視を名目に多数のUS Navyが太平洋で活動する事を知った。

 

 ここで改めてLaw ShipとWar Ship, 即ち海洋安全保障における法執行と軍事執行のあり方について確認したかった。それで寺島運営委員長にご挨拶に伺いたい、とご連絡を入れた。

 寺島さんは笹川太平洋島嶼基金運営委員長であると共に海洋政策研究財団の常務理事。笹川島嶼基金が「海洋問題」大きく舵を切ったのは羽生会長の判断だが、寺島運営委員長の存在が大きい。

 米国の動きを見ていると、法執行の分野、UNCLOSまでにも海軍が進出しているように見える。他方ポッセコミテタスというconstitutionのおかげで辛うじて、法執行が保たれているようにも見れる。具体的には漁業監視を行う海軍の船には必ずUSCGかNOAAの法執行官が乗船する。

 しかし、米国のSea Powerを見れば42,000人いるUSCGも海軍・海兵隊に比べて6%程の人員でしかいない。ホノルルのUSCG第14管区も手薄だが、グアムセクターは片手しかいない。NOAAの法執行官はもっと少ないだろう。

 今手元に見つからないのだが、寺島運営委員長が書かれたペーパーに「海洋安全保障の新秩序は第一義的は法執行」という表現があり、これがずーっと気になっていた。軍事力を否定はしていない。 別のペーパーに海洋の母エリザベス・ボルゲーゼさんが「海軍とUNCLOSは離婚している。」と言ったと書かれていた。こちらは海洋政策研究財団の秋元さんのペーパーだったと思う。

 米国の現状を見ると、海軍と法執行の関係がわからなくなってきた。現在進めているミクロネシア海上保安事業は日本の海上保安庁、即ち法執行機関と協力して進めている。将来、海上自衛隊の協力があり得るのであろうか?そうであればそれはどんな形で?

 年末、寺島運営委員長にこの点だけもお伺いしたいと思いご連絡したところ「昼食をしながら雑談をしましょう。」となんと3時間も取って下さった。

 雑談内容は広く、深く、まるで太平洋の海に漕ぎ出したような、あっという間の3時間であった。

 

 私の上記の質問は、私の頭が悪いので寺島運営委員長のご説明を正確に理解していない可能性が高く、ここに書くのは控えておくが、UNCLOSと軍事の関係だけはストンと飲み込めた、と思う。

 UNCLOSの議論がされたのが冷戦真っ只中。当時、軍事行動の足かせとならないようにUNCLOSの内容が協議されたのだという。暗黙の規制があったのだ。これがボルゲーゼさんが言っていたという「離婚」問題のようだ。

 つまり、パネッタ長官が、ペンタゴンがUNCLOS批准を声高く支持し始めたのは軍事行動にUNCLOSが足かせになる事はない、共存できる、という意味で、UNCLOSに軍事力が関わる、という意味ではない。

 それでもやっぱり法執行と軍事執行の棲み分けは時代により、国により、一緒だったり、分けられていたり、グレイだったりするので、未だ私の頭は中は霧がかかったままだ。

 もう一つ、寺島運営委員長が指摘されたのは、日本は軍事法に関する研究が少ない、ということであった。法執行が何かを明確にするには軍事法とは何かを明確にしておく必要があるのだと思う。これも戦後の後遺症の一つであろうか?

 ハタと思い出したのは元運営委員長でもあられた渡辺昭夫先生が日本は安全保障に関わる法執行分野の研究が少ない、という指摘であった。渡辺先生は戦後初の日本の防衛戦略「樋口レポート」の執筆者である。

 ♪ Law(Row) law (row) law(row) your boat ♪ 軍事法の勉強せなあかん?