やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

安倍首相の太平洋訪問に向けて(8)大平総理のパプアニューギニア訪問

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若き大平大蔵事務官

来月予定されている安倍総理のパプアニューギニア訪問。

1985年の中曽根総理の訪問以来(この時安倍外務大臣と当時の秘書であった安倍晋三現総理も同行)とニュースにあるが、これより先1980年に大平総理と大来外務大臣が訪問していおり、こちらの方が重要と思うがあまりニュースにも出て来ないようなので不肖ながら書いておきたい。

 

<『アジア太平洋連帯構想』>

当方の恩師、渡辺昭夫先生が編集された『アジア太平洋連帯構想』がある。以下同書の長富祐一郎氏の文章を参考にさせていただきました。

APEC創設につながる、大平総理の環太平洋連帯構想が発表されたのが1978年。

1980年6月12日、大平総理は逝去されている。

同年1月に豪州NZを訪問。キャンベラで首脳会談後「環太平洋連帯構想で日豪合意」が発表。

大平総理のパプアニューギニア訪問はこの豪州NZの後ではないかと想像するが、長富氏も書いていないし、ウェッブにも見当たらない。今資料を探している余裕がなく宿題としたい。パプアニューギニアで一体誰と会って何を話したのか? (*)

 

<太平洋の島が抜けたAPEC>

大平総理の環太平洋連帯構想。当初の英文標記はPacific Ocean Communityであった。太平洋の海がテーマだったのだ。しかし創設されたAPECの正式メンバーになった島嶼国はパプアニューギニアだけ。他の太平洋島嶼国は(豪州NZが牛耳っている)PIFがオブザーバーになっているだけである。アジアと真ん中の海が抜けた環太平洋諸国の組織となってしまっている。

 

そのパプアニューギニアが来年2015年APEC首脳会議開催地となるのである。パプアニューギニアのAPEC正式加盟は1993年。

大平総理がPacific Ocean Communityで連携を図ろうとし、今また日本企業の支援で天然ガス開発が進むパプアニューギニア。安倍総理の訪問は歴史的意味を持つのではないだろうか。

 

<再びソマレ閣下自伝"Sana">

日本とパプアニューギニアの関係は、豪州米国も知らないようなので、英文でブログにメモしておいた。常日頃情報交換をしている豪米の外務省、国防省、太平洋の友人達に配信してある。

この本、白人による「人種差別」が基調になっているのだ。白人にとっては読んだとしても忘れたい内容であろう。しかも、日本人が、ソマレ閣下を支援する人物として登場する。柴田幸雄中尉である。1944年当時8歳であったソマレ閣下の村ウェワクに赴任した柴田幸雄中尉は現地に学校を作り、ソマレ少年は生まれて初めて学校教育を受ける。柴田中尉からソマレ少年は独立の精神を、白人からの長年に渡る支配からの解放精神を学んだのである。

ベルサイユ条約で豪州の委任統治となったパプアニューギニアに1944年まで学校がなかったのである。1919年から25年の年月、豪州はパプアニューギニアに何もしてこなかったのだ。(これは豪州人自らの見解でもある。)他方、ミクロネシア委任統治をしていた日本の政策が当時の基準でどれだけまともなものであったか。国際連盟規約なんて白豪主義の豪州にとっては美辞麗句を並べただけ。合理的搾取(矢内原の評価)、新たな植民地支配以外の何ものでもない。

32歳の大蔵事務官、大平総理は本省主計局主査で文部省と南洋庁を担当していた。

 

* 追記

第091回国会 予算委員会 第3号 昭和五十五年二月一日(金曜日)に大平総理のPNG訪問の件がありました。長いですが関連部分を下記にコピペします。

投資環境が課題であったようだ。

 

○塚本委員 大来外務大臣、時間が少のうございますが、せっかくの機会だから一言だけ触れておきます。

 過日、一月十五日に大平総理と大来外相がオーストラリアにおいでになって、帰りにパプア・ニューギニアにお寄りになりました。そのとき、環太平洋経済構想でもって、いままで経済の投資が途切れておったところのパプア・ニューギニアに対して、これはここで二回にわたって福田総理にお尋ねしたことがございます。しかしうまくいかなくて、強制的に国有化されてしまった問題があります。したがって、そのことによって結果としてはいわゆる接収されてしまって、政府は、投資保険を適用したから、以後再投資、これから投資することの保険の適用をストップをかけられておって、経済断交のごとき状態になっております。これを、せっかく外務大臣がお寄りになったので再開されようという報道がなされました。私は結構なことだと思います。これからの問題として、仲を悪くしたままでおくことはいけないと思います。しかし、あのときに不法に取り上げて、いま同国の憲法違反として訴訟問題になっておりますし、また政府から保険をもらったその会社は、やがてはそのパプア・ニューギニアの国からその債権を回収して政府に払うというのがいわゆる保険の制度になっております。したがって、この紛争を、裁判をそのままにしておいていわゆる投資保険を続けるというのはいかにもまずいと思います。したがって、せっかく仲よくしようと総理までおいでになった懸案であり、しかもこの問題については大来さんみずからが、海外経済協力基金の総裁として金を出している立場においでになったからよく御存じです。したがって、これを行うのを契機にして裁判になっている問題を解決するように、通産省と努力していただくことを念頭に置いてひとつやっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○大来国務大臣 ただいまの問題につきましては、先般の総理に随行して参りました際、ソマレ首相にもお会いしたのでございますが、実は、本件につきましてはその一月ほど前に参りましたオレワレ副首相から話がございまして、その際、日本側としても関係方面と話し合って処置をしたいということでございました。それで、わが国はパプア・ニューギニアとの経済関係が近年緊密化していることにもかんがみまして、同国に進出するわが国企業の活動が円滑に行われることが必要であるというふうに考えているわけでございますが、現在引き受けが停止されている対パプア・ニューギニア投資保険の再開のためには、停止となった原因である事故等も踏まえまして、同国の投資環境が改善されることを見きわめつつ、両政府の間で話し合うことにいたしたいと考えております。この点につきましては、投資保険は通産省の所管でございますので、両省の事務当局で打ち合わせいたしました。

○塚本委員 大臣、ですから問題を残したままでそのままやっておってもらってはまずいということだから、裁判そのままでいわゆる投資保険の引き受けをストップしているでしょう。それを再開するというのだから、紛争の問題を解決するために外務省も通産省も一緒になって、これはこれで別途の方法で解決の努力をすることを、いわゆる窓をあけておいていただいて進めてほしい、こういうことなんです。ようございますか。

○大来国務大臣 ただいまの御趣旨、了解いたしました。事務当局ともよく相談いたします。

○塚本委員 通産大臣、いいですか。

○佐々木国務大臣 御協力申し上げたいと存じます。

 

上記以前の国会質疑の会議録もあった。昭和51年だから1976年。PNG独立翌年である。独立前から日本企業がPNGに入っていた、という事だ。これも長いがコピペしておきます。

第078回国会 予算委員会 第2号

昭和五十一年十月一日(金曜日)

○塚本委員 今度は本当に実行していただけるというような決意だと私は受けとめて、私たちも全力を挙げて御協力を申し上げますので、総理の在任中にぜひこれが実現するように御努力をいただきたいと思います。

 そこで、同じ外交の問題についてさらに申し上げたいことがございます。

 経済外交の問題でございます。ソビエトから言われて、表現は悪うございますけれども、強くきちっとできなかった。アメリカから協力の要請についても、まあそうではないと政府はおっしゃるけれども、国民は心配をいたしております。同じように、いわゆる外国に対する開発投資の問題等におきましても、福田副総理も私は一度陳情を申し上げたことがあるから御存じでございますが、ついに法律でもって、いわゆるパプア・ニューギニアにおけるところの開発投資は取り上げられてしまいました。いろいろな難題をつけられてまいりました。世銀から金を借りるためには五一%の株が必要だという難題でございました。調査をしてみましたら、実際はそれはうそでございました。あるいはまた、企業に対する責任者を渡せという難題でございました。それも事務当局の協力によって切り抜けてまいりました。ついに相手方に難題が通らないと見たら、法律でもって取り上げてしまって、そうして開発をしておったところの役員たちや日本従業員は全部まる裸で追い出されてしまいました。そして日本でもらっている給料に対する税金まで払ってこなければ帰してやらないと現地では言われて、二万ドルすなわち七百万円ほど、盗人に追い銭のような形で本国から金を送って、実は追い出されてまいりました。大使館に相談してみましたら、厄介者が来たような形で応対をされてしまいました。その間、私は外務省の事務当局にずいぶん御協力いただいた。その間におけるところの一言一句といえども勝手に企業はやったのじゃない。外務省に文書までつくっていただいたり協力していただいた。その点は事務当局に感謝いたします。通産省も同じような御協力をいただいた。にもかかわらず、最終的にはこういう形で、政府の代表を派遣してくださいと副総理に申し上げた。出そうとおっしゃったけれども、実際は行っていただけなかった。もうこれは仕方がないから、いわゆる投資保険の適用をしてちょうだいという段階になった。追い出されて身ぐるみはがれて法律を適用されたのだから一〇〇%投資保険の対象になります。それは事務当局もお認めいただいておるのです。にもかかわらず、投資保険を適用すると他の企業に対する一切の融資がストップされてしまうので御勘弁をという気持ちが事務当局におありになるわけであります。私は、日本というものは、軍事やあるいはまたあらゆる外交だけではなく、経済の外交においてもこういう主体性を失った形でふらふらしておるとしか思いようがない。歯ぎしりかんで進出の企業は実は泣いております。総理、こういう事態を御存じでしょうか。

○三木内閣総理大臣 経済外交に対して日本が主体性を持つことは当然でございます。経済外交の基礎にあるものは、やはり日本の国益というものを守り、国益をさらに発展させていくということですから、個々のケースに対していろいろな御批判もありましょうが、主体性のない経済外交というものはあり得ないことでございます。いろいろ個々のケースについては批判をされるような余地もありますが、この点はいろいろと気をつけなければならぬ点もあることは事実でございますが、常に日本の経済外交は主体性を持つべきであるということは申すまでもない。

○塚本委員 副総理にお尋ねいたします。

 経過は大分前のことですからお忘れいただいたかもしれませんが、二度にわたって私はお願い申し上げた件でございますけれども、相手方はいわゆるジョイントベンチャーですから、相手は政府なんですよ。こちらは民間会社なんですよ。日本の政府が行かなければ、法律をつくって自由にするのですからどうにもならないのです。しかも、同国に対しては一番大きな投資のチームなのでございますから、政府の代表を出していただきたいと私は二度にわたってお願いして、副総理もお約束いただいたはずでございます。このときに私は痛切に感じたことが一つあります。

 相手の国に言わせると、日本は経済協力をしたと言うけれども、何にも協力してないじゃないか、ひもつきの協力ばかりじゃないかと言って向こうの政府は怒っているのです。やはりそのときに、あくまでも民間投資は民間投資、これは向こうの自由にはなりません、日本の政府から金を借りて投資しているのだから、返すまでは五一%の株を持っておらなかったら返す責任はとれません、だから、それは民間投資だから十分理解してください、そのかわり、いわゆる新興国あるいはまた開発途上国だから別個に経済協力はひもつきでなくてしてあげる、こういうことがなかったら、出ていった企業は全部かたき討ちをやられますよ。だから、世界じゅうから、日本はドル持っておっても経済協力をしない、しておるのは投資のときの金を貸しておるだけだ。だから、これも向こうは協力だというから、向こうの国会でまで日本の会社は実はひもつきしか協力してくれないのだ、日本の政府はと、こうなってしまうのです。それは民間企業の投資というものと、そういった政府からの直接ひもつきでないところのいわゆる経済の無償供与、そういうことをきちっと分けておやりにならないと、各地において悲劇をこうむっております。その点、副総理、どういう御見解でしょう。

○福田(赳)国務大臣 お説のとおりと思います。つまり、無償協力、これはそういう適当な案件があればやる。しかし、企業が進出する、それに対する政府の資金的援助、協力と申しますか、これはそれとは別個の問題であります。

 ただ、御指摘のパプア・ニューギニアの問題です。これは適当な経済協力というか、無償援助とか技術援助とか、そういう案件がなかったのじゃないか、そのような感じがしますが、筋は塚本さんのおっしゃるとおりでなければならない、こういうふうに思います。

○塚本委員 遅きに失したのですよ、副総理。私は、あなたからおっしゃっていただいて、基金の大来総裁においでいただくことまで指名で申し上げた。そのときに、いまおっしゃったように、無償供与は無償供与として、少なくとも日本が戦争で御迷惑をかけた国だから、一億ドルくらいはやはり無償供与のことをしてあげなかったらこの国は成り立ちませんぞ。だから、そういう意見等もあなたは実情調査して聞いておいでになったらどうでしょう。しかし、それと、民間企業は政府から金を借りて進出をするのだから、これに対しては無理を言いなさるな、使い分けてこの事態の円満な解決のために努力をなさったらいかがでしょう。私は、そういうことまで含めて、もし向こうの要望があるならば、春日委員長と塚本書記長が副総理なり総理にお願いしてでもそれはそれで協力をさせていただこう、そういうふうにしていかなかったら、これは出ていった企業がかたき討ちされます。だから、そういう点を私は要望を再三にわたって申し上げたのであります。ついにそれがなされないままに追い出されて、大使館に駆け込んだら、迷惑者が来たというような状態で横向いて、そういうような扱いを受けて歯ぎしりかんできておりますよ。これはいわゆるTPPOだけじゃないのです。マレーシアにおいてもあるいはまた別のところでもパプア・ニューギニアと同じような結果になっておる。しかも、それであって身ぐるみはがれて取られてきながら、保険の適用さえもちゅうちょしておいでになるという状態じゃございませんか。むしろ、日本は協力をすることは協力をする、堂々と政府の代表を直ちに派遣なさって、そのかわり民間を法律で乗り取るなんというやり方はいけませんということで、きちっと、いまからでも遅くないから、解決に乗り出されていただかないと、私たちはこれは黙っておれませんよ。強引に保険の適用を迫っていくという形になってさましたら、経済関係はまずくなります。直ちに事態解決のために、やはり政府の代表をお出しいただいて、その法律の適用をしてください、そのかわり、供与は供与、民間の開発は開発、最初の進出の協定を実現してくださいと政府の立場から忠告を申し上げて、協力してあげることと、そして世界経済のパートナーという立場とを区別をなさっておやりになることが必要だと思います。事態を十分外務省、通産省、大蔵省御承知のはずでございますから、いまからでもそういうふうに乗り出していただくというお約束をしていただけませんか。いかがでしょう。

○福田(赳)国務大臣 非常にこれは込み入った事情のあるような問題のようですが、なお政府においても取り調べ、適当な対策があればそれを進めるということにいたします。

○塚本委員 外務大臣がおいでになりませんから総理に申し上げますけれども、やっぱりそういうときに頼るのは日本の大使館です。大使館が、そんな法律をつくったら国際信義上まずくなるぞと一言ぐらい大使が首席大臣に向かって注意をなさるということが必要だと思いますよ。厄介者が来たという扱いをされて泣いて帰ってくるような進出企業。私が関知しておったからこれは申し上げられるのですけれども、恐らくこのテレビをごらんになった各地の進出企業はまた同じようなことを言ってくるだろうと私は思います。これは外務省としてやってあげなければならぬことをやってないものだから、できるだけさわらぬ神にたたりなしというような態度に日本外交はなっておるのです。だから、防衛問題だけじゃない、経済外交においてもそういう状態があるということを十分御認識いただいて、福田副総理とともに、とりあえずその問題を端緒としまして、私は後から二、三の問題等も御相談に上がりますから、速急に解決をしていただくようにしないと、ただこのまま保険の適用をすれば一切の融資はとまるのですよ。これは経済断交になるのです。だから、それはやっぱりまずいということをお考えになって、総理もその点外務大臣の立場から、副総理よりもっと前向きの答弁をお願いしたいと思います。

○三木内閣総理大臣 福田副総理のお答えいたしましたように、この問題は、実情というものを塚本君熱心に御発言になりまして、われわれとしても事情というものをよりよく理解することができましたから、そういう御発言も踏まえて、各省間で問題を掘り下げてみることにいたします。

○塚本委員 ありがとうございました。ぜひそれをやってちょうだい。もう各省の諸君はずいぶん御協力いただいて、事務のレベルではどうにもできない。局長の諸君は全部知っているのです。五年間かかってりっぱに実が実って、いざ収獲のときに追い出されてきたのですから、こんな悲しい状態は――あるいは日本の国家として屈辱的な事態になった。

 しかし、私は相手を責める気はありません。それは日本がなすべきことをなしていないんだ。事務当局がずいぶん御苦労なさってここまで来たのです。ですから、総理と副総理は十分チームを組んで善処をしていただきたい。お願い申し上げておきます。

 

第080回国会 予算委員会 第4号 昭和五十二年二月九日(水曜日)

○塚本委員 具体的に進めていただきたいと思います。

 そこでもう一つ、私、国際経済の問題で突っ込んでお話をお聞きしたいと思っておりましたが、時間が次の問題と幾つかありますので、早く次の問題に移りたいと思います。

 一つだけ。私は昨年の十月本委員会におきまして総理からパプア・ニューギニアの問題を例に引いて、外交の自主性のなさ、それはこちらが援助すべきものを全然援助をしていないので、向こうから開き直られても言うべき言葉がなかった。これはいけないことだ。したがって、きちっと無償で日本の政府はかくなるごとく援助をしたいと思う。途上国からはたくさんの材料を仕入れてきております。ところが、民間投資だけに任せておりますから、投資を受けた相手の国におきましては、日本からの援助はひもつきばかりでございます。こう言って怒って、ついにその仕打ちのような形で民間投資の会社が取り上げられてしまった、こういう例を出しました。政府代表を派遣するとお約束をいただきまして、政府代表がおいでになったのです。おいでになったけれども、相手方では、総理だけではなく閣僚にさえも会わしていただけずに、実は素手で帰ってきたと報告だけ伺っておりますが、その後どうなったんでしょうか。

○鳩山国務大臣 パプア・ニューギニアのパームオイルの工場のことだと思います。昨年の十月に塚本先生の御注意がありまして、政府代表が出かけたことも伺っておりますが、その後、接収となった後の補償の問題がいろいろ問題が残っておるということを聞いております。補償につきましては、パプア・ニューギニアの国内法で審査委員が任命をされて、そしていろいろ査定に入っているようでございますが、どうもその金額がなかなか日本の会社の投資額に比べて不十分ではないかという問題を伺っておりますので、これらにつきましては一次的に担当の企業の方で御折衝いただいて、そしてそれが十分解決しないときに外務省として何かできることがありましたならば御協力を申し上げたい、こういう状況でございます。

○塚本委員 中身なんかそう大した問題だと――私は本委員会で大げさに取り上げる問題ではないかもしれません。しかし、政府の代表がわざわざ現地に行きまして、総理のみならず一般閣僚にも面会することができずに帰ってこられたというこの事実を、総理何とお考えになりますか。

○福田内閣総理大臣 私は、企画庁長官のとき塚本さんからそのお話を親しく承りまして、当時は大変事情には詳しかったのですが、その後のいきさつは実は承知しないのです。そういうようなことで、いまわが国の特使が向こうの閣僚にも会えなかったというようなことについては承知しておりませんけれども、そういうことであったとすればまことに遺憾なことである、かように存じます。

○塚本委員 外務大臣、いまごろおいでになっても相手方は逃げるかもしれませんぞ、きちっとソマレ首席大臣が帰ってくるときを見計らって行きなさい、こういうことで、大丈夫でございますという返事で、それでわざわざ政府代表がおいでになったにかかわらず、相手を見下げるつもりはありませんけれども、一国を代表し、本院でお約束をなさった政府の代表がおいでになって、二百万の人口の国の総理だけではなく一般の大臣にさえ会うことができずに政府代表が帰ってきたということは恥ずかしいことだと私は残念に思っております。きちっとそのことをソマレ首席大臣に話をなさって、そうして、私たちはいままで無償援助はしておりませんでした、これからこういう援助もさしていただこう、ましてや戦争中にパプア・ニューギニアにおいてはたくさんの御迷惑をかけた、そして万を数えるところの先輩も亡くなっておる、だから政府として協力をすべきことはこれこれでございます。しかし、民間投資会社を法律によって黙って召し上げるというやり方は、これはいけないと警告を何度も発しておったはずだから、きちっとそのことは協力することはする、そして民間投資は民間投資、けじめをつけなさいということで出ていただいたのです。それがなされずに、こうしてその賠償の問題のいい悪いということで議論をしなければならぬことはきわめて残念。先ほど申し上げたように、外交というものがなすべきことがなされていないからこそ、実は言うべきことが言えないのではないか。私は外務大臣に強く御要望申し上げておきたい。担当局長にもおいでになるときにきちっと御注意申し上げたはずです。お出になるときに大使にまで出発には事情は御説明申し上げたはずです。うるさいから会わせずに追い返したというやり方が駐在大使のやり方ではないかとさえも私は悪推量いたしております。一体日本の外交、これでよろしいのでしょうか、その姿勢をお伺いしたい、外務大臣。

○鳩山国務大臣 私も、外務省に参りました前のことでございますので、自信を持って申し上げるわけにいかないわけでございますけれども、向こうの担当大臣に会えなかったという事実も伺っております。先方ではいろんな理由を設けておるわけで、その事実がどうかということも私自身自信があるわけではございませんけれども、そのようなことが民間企業に対しましていろんな御迷惑をおかけするというようなことになりますとこれは大変でございますので、今後ともそのようなことのないように努力をいたす所存でございます。

○塚本委員 このことについては、ひとりわが国だけではないのです。世界銀行とのジョイントベンチャー、合弁のいわゆる向こうの政府はいま計画があるんです。私は、このことの経過の途中において、ワシントンで世界銀行にも会ってきたんです。アジア局長は、まことに現地のやり方はけしからぬ、私からも注意いたしますとして注意してくださったんです。本月の二十二日にはわざわざアジア局長が私を訪ねておいでになることになっているのです。世界銀行みずからがこのやり方は間違いだと言って、そしてわざわざ御注意なさったけれども、法律によって取り上げた。だから心配なさって、この国に融資すべきかどうかについてわざわざ世界銀行のバトー・アジア局長が私を訪ねておいでになることになっている。世界銀行でさえもそこまで御心配なさっておいでになるのにかかわらず、日本政府がこの態度なんです。日本の外交というものは場当たりでもって、いま大臣がいみじくもおっしゃった、私のときでありませんので確信を持っては申し上げられませんとおっしゃったように、閣僚が次々とおかわりになり、担当局長さんが次々とおかわりになりまするから、その都度私は御注意と御説明を申し上げておってこんな始末になったんです。この点は、大臣がきちっとその点の姿勢を正していただきまするように私は強く御要望申し上げます。総理から一言御発言いただきたい。

○福田内閣総理大臣 あのようなことが再び起こらないように最善の努力をいたします。

○塚本委員 通産大臣、その企業についてはきちっと、いまや投資保険をかけて、きちっと手続が進んでおるようでございます。担当局長はそのように作業をなさっておいでになりますが、きちっとそういう適用をして、そうして所要の各金融機関等の手続と、法に定まったいわゆる保険の手続等をなさることをここでお約束いただきたい。

○田中国務大臣 お答えいたします。

 本件に関しましての外国政府の接収等によりました企業に対しまする損害に対しまして、海外投資保険の法令の約款の定めるところによりまして保険金を支払うべきものと考えます。この点ははっきりと前向きに処理いたすことをお約束いたします。

○塚本委員 幾つかそういう問題がいまできてきておるのですから、この点時間がございませんから、こういう個々の例だけ申し上げておったら話が進みませんから切り上げさしていただきますが、援助は援助として、政府は、南北問題あるいは途上国問題と世界から指摘されるような状態にはならないようにきちっと御協力、特に日本の国は材料を分けていただかなければならないのですから、彼らが本気になって怒ったら、日本の経済の根幹が揺るぐことは御承知のとおりです。だから、協力すべきものはきちっと他の国から非難を受けないようになさい。それでないと、言うべきことが言われなくなる。この基本原則が一番問題です。パプア・ニューギニアの事件はその一つの例として私は注意深く見守っておったので申し上げたのでありまして、そのほかに幾つかあります。ウランの輸入の問題もあります。いろいろな問題があります。しかし、いまそれを取り上げておったのでは時間がなくなってきますので、十分にそのことだけ御注意を申し上げておきます。いかがでしょう。