やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

貞岡大使との会話

 2010年11月のパラオ出張で、在パラオ日本大使館の貞岡大使とお話することができた。

 ODAが削減される中で、数の多い太平洋島嶼国に遍く平等に支援するのはどうか?というお考えのようだった。

 笹川太平洋島嶼国基金は前運営委員長渡辺昭夫先生のご意見で、ミクロネシアに比重を置いた支援を1998年から実施してきた。

 

<日本の対島嶼国支援>

 日本政府の対太平洋島嶼国支援はバイが基本である。

 島嶼国基金は当初よりマルチで、米豪とも時には協力し進めてきた。

 

 太平洋島嶼地域には多くの政府地域機関があるが日本政府はどこにも、オブザーバーとしても参加していない。

 島嶼国基金は当初より、事業目的に沿って、効果的に実施する地域組織(USPなど)と随時手を組んで進めてきた。

 

 日本政府はPIFの正式対話国になっており、毎年PIF議長の招聘と、PIF総会への出席、そして3年に一度開催される日本政府主催の「太平洋・島サミット」はPIFとの共催という形を取っている。

 島嶼国基金も、当初PIFをカウンターパートとしていたが、効率的なかったので、対話先はinclusiveで進めてきた。

 

<PIFの実態>

 太平洋諸島フォーラムは、フィジーの初代首相、故カミセセ・マラ閣下が、島の問題を島のイニシアチブで協議したい、と立ち上げた組織である。

 よって、現在メンバーであるオーストラリア、ニュージーランドを入れるかどうかは苦渋の選択であった、と当時を知るパプア・ニューギニア首相ソマレ閣下が述べていた。

 結果、豪州、NZを入れた16カ国から構成されるが、カミセセ・マラ閣下の当初の思惑からは、大きく道が外れたように見える。

 今年の総会にはソマレ首相始め4カ国の首脳が欠席した。

 

<0.6%の参加>

 先月10月に発表されたバヌアツにあるシンクタンク、Pacific Institute of Public Policyのペーパーにちょっと驚く数字が出ていた。

 島嶼国14カ国が負担しているフォーラム予算は全体の0.6%である、というのだ。貞岡大使も驚かれたようだった。

「0.6? 99.4%が豪州、ニュージーランドということですね。」

 

  0.6を14カ国で割ると、一カ国平均0.04%の予算負担ということだ。

 0.04対99.4。この比率では島のイニシアチブは発揮できないであろう。まさにこの数字がPIFの実態を語っている。

 

<新たな太平洋島嶼国外交>

 PIF重視の日本の対太平洋島嶼国外交は豪州従属外交、とも言える。

 民主党政権になって、太平洋島嶼国との議員連盟も新しく発足したようであるが、ここは超党派で、新たな太平洋島嶼国外交の舵を取って欲しい。

 その可能性の一つが日本財団が、笹川平和財団が既に提案し、進めている「海洋外交」である。

 

参考文献

Pacific Institute of Public Policy, "ISLAND DREAMING: A fresh look at Pacific regionalism", Discussion Paper 15, October 2010