やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

バヌアツサイクロン被害とインドネシア

 


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写真はスカルノ、ケネディ、リニ ー インドネシア、米国、バヌアツを結ぶ西パプア問題

 

<バヌアツを巡るハイポリティックス>

たまたま、超大型サイクロンがバヌアツを襲っていた時、同国の大統領が日本で開催されていた国連防災世界会議に参加していた事もあり、本件は日本でも大きく取り上げられた。

そして、羽生会長からもある特殊事情があった関係で、引き続き情報収集をするようご指示をいただいているので、このブログもここ数週間はバヌアツを中心にメラネシアに傾いている。

 

このサイクロン被害でロシアと中国政府がチャーター便を飛ばし支援した背景、ハイポリティクスについては既に書いた。

 

yashinominews.hatenablog.com

 

もう一カ国、チャーター便を飛ばして2億円近い支援物資を運んだ国がある。

インドネシア、である。

 

 

<西パプア問題>

インドネシアの支援が発表された時、バヌアツFB等では支援を受け入れていいのか?という声が多く上がった。また、西パプアでバヌアツサイクロン募金活動をしていや現地人に対し、インドネシア警官が発砲したとの記事もあった。

 

Indonesian police shoot Papuans fundraising for Vanuatu after Cyclone Pam

http://freewestpapua.org/2015/03/21/indonesian-police-shoot-papuans-fundraising-for-vanuatu-after-cyclone-pam/

 

 

西パプア問題、これも以前書いた。

 

yashinominews.hatenablog.com

 

世界が、見過ごす、見放す、この西パプア問題を一貫して支持、支援しているのがバヌアツ共和国、なのである。

その背景には他のメラネシア諸国より茨の道を歩んで手にした独立の経験から、それが得られなかったニューカレドニアと西パプアのメラネシア同胞への強固な同情がある、のかもしれない。

 

西パプアの独立運動や、サブリジョナル機関ーメラネシアスピアヘッドへの加盟支援など、バヌアツ政府は積極的に動いている。

これに対し、インドネシアはメラネシア諸国全体に対しさまざまな懐柔策を取って、足並みを乱そうとしているようにも見える。

 

だから、今回のサイクロン被害で、インドネシアから支援を受けていいのか?という声が出て来たのだ。

 

 

<あれはあれ、これはこれ>

このような声に対し、バヌアツのキルマン外相は明確に「あれはあれ、これはこれ」と、即ち援助は受け入れるが、西パプア問題に影響を与えるものではない、バヌアツはどの国からも人道支援を受けると述べている。

 

 

"Vanuatu says Indonesian aid has no bearing on Papua issue"

9 April 2015, Radio New Zealand International

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/270765/vanuatu-says-indonesian-aid-has-no-bearing-on-papua-issue

 

今年終盤には、ソロモン諸島で開催されるメラネシアスピアヘッド会議で西パプアの加盟が協議される。

 

 

<JFKと西パプア問題>

ケネディ大統領政権の時期とこの西パプア問題は重なっている。

ケネディ大統領の判断が現在の西パプア問題を決定させた、と言ってもいいのではないだろうか?

第二次世界大戦中にバヌアツに滞在していたJFK。自分の遺産でもある西パプア問題をバヌアツが引き継ぐ様子を、もし生きていたらどう思うであろうか?

 

以前は、背景に西パプアにある鉱山問題があると書いたが、この件を追っているフリージャーナリストから聞いた話では、インドネシア政府に捉えられた米国CIA要員アレン・ポープの釈放があったという。

 

ウィキに詳細があった。

http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_West_Papua

http://en.wikipedia.org/wiki/Allen_Lawrence_Pope

 

映画の題材になりそうなストーリーである。

ケネディ政権はインドネシアに捉えられたアレン・ポープの釈放と引き換えに、西パプア独立を支持していたオランダ政府への支援を中止。インドネシアに西パプアを引き渡したのである。

インドネシアを失ったオランダは、その権益を守るため西パプアを独立させようとしていたのであろう。

 

スカルノがポープに言った最後の言葉がすごい。そのまま映画の台詞になりそうだ。

 

I want no propaganda about it. Now go. Lose yourself in the USA secretly. Don't show yourself publicly. Don't give out news stories. Don't issue statements. Just go home, hide yourself, get lost, and we'll forget the whole thing.

 

「さあ行け。この件をプロパガンダに使うな。密かにアメリカに戻れ。しかし決して表には出るな、メディアに情報を売るな。祖国に戻れ、身を隠して消えてなくなれ。我々は全てを忘れるのだ。」(訳してみましたが自信ありません。)

 

 

スカルノを、インドネシアの独立を支援した日本。

もうすぐ安倍総理がインドネシアで開催される、バンドン会議に出席する。

インドネシアと太平洋島嶼国を結ぶ西パプア問題。日米協力で某かの解決策が見出されないであろうか?