やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

太平洋島嶼国のジャーナリズム模様

logo_pms.jpg images.jpeg logo_pasima.png 笹川太平洋島嶼基金が1991年から2008年まで18年、日本と太平洋のジャーナリスト交流で、100人以上のジャーナリストを日本に招き、今数字はないが、多分20人以上の沖縄の離島ジャーナリストを太平洋に派遣した事は以前書いた通りである。この事業、笹川運営委員長(当時)の御発案である。 太平洋島嶼国ジャーナリスト交流事業 9月に開催されるSIDS会議に向け、どのようなネットワーク作りが可能か、という宿題を海洋政策研究財団の寺島常務からいただいている。このジャーナリストネットワークを活用しない手はないではないか!と調べだしている。 太平洋の22の国地域からなる個別のメディアと連絡を取るのは難しい。そこで、島嶼基金は94年頃から地域機関のPacific Islands News Associationをカウンターパートとして事業を展開した。これが大成功。 PINAは元々米国のアジア財団が支援してきた組織であるが、冷戦終結と共に米国が太平洋地域から引き上げ、フィジーにあったアジア財団も閉鎖。PINAは重要なスポンサーを失っていた所であった。 2006年のフィジーのクーデターはこのメディアの地域体制にも大きな影響を与えた。 複雑な経緯を、思い切って簡単に説明すると、フィジーの軍事政権寄りのPINAを見限ったメディア組織がサモアを中心に設立されたのである。 Pasifika Media Association (PasiMA)である。2010年の設立。主に独立、産業新聞のオーナーからなる。ある意味、政府と命がけで戦ってきたメディアである。(社屋を焼かれるとか、そういうレベルなのだ) 笹川太平洋島嶼基金が支援したメディア事業は大きな影響を近隣諸国に与えたのだ思う。まず中国がメディア招聘を実施(真似したな)。で、豪州もメディア支援を検討し始めた。(なんで私たちのテリトリーで日本が大きな顔しているのよ、と思ったのかもしれない。) 豪州は地域のメディアが2つ(実際には3、4つと小さなグループが出来たり消えたりしていたはずだ。)に別れたのを憂慮し、新たな組織を設置した。それがPacific Media Assistance Scheme (PacMAS) PINAともPasiMAとも立場を異にした、即ち政治的背景がない中立のメディア支援を目的とした国際組織である。100%豪州の支援で行っているが、スタッフは島嶼国の人が中心。必要なところは、オーストラリア、ニュージーランドのジャーナリスト専門家の支援を受けたり、また中国政府、JICA等等外からのコファンディングでも活動を展開している。 ここのProgram Manager, Francis Herman さんにお会いする機会があった。日本のNHKで6ヶ月の研修を受けた事があるという。日本のメディアの質が高く、価値観も島嶼国に近い事を認識されているようである。 笹川太平洋島嶼基金の事業もよく知っていて、沖縄とのジャーナリスト交流はよかった、と言っていただいて、その日はなんだか嬉しい一日となった。 ハーマンさんはさらに日本の放送局と共同で海洋関係、特に今地域で問題となっているDeep Sea Miningのニュース番組かドキュメンタリーを作成したいと具体的な提案までいただいた。「望むところです」と言いたかったが、「上司(寺島常務)に報告しておきます。」と応えた。 なお、サモアSIDSに行く事を伝えたところ、既にPacMASのスタッフが現地入りしており、メディアワークショップを開催しているという。この方日本で修士、博士を取られたそうで、ハーマンさん曰く「日本語ぺらぺらだから会うといいよ。」と言っていただいた。