やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

楽園の島に逃げる「お金」 - SIDSサモア会議(3)

世界の民族の数を知らずに「民族の自決」と唱えたウッドロー•ウィルソン大統領の功罪は奥が深い。

世界の小さな島々は主権国家となったおかげで、世界のお金の逃避場所ともなった。

いや、お金の逃避場所にするために主権国家とさせたのかもしれない。

今回のサモア滞在中、寺島常務からは「転んでもただで起きませんねえ」とお褒め(?)の言葉をいただいた。思いがけない重要な情報を手にした。

翌日の海洋政策研究財団のイベントを控え、パラオのレメンゲサウ大統領を探して三千里、じゃない、3時間。諦めてホテル行きのバスに乗り込んだところ、坐った隣が某島嶼国の大臣。ホテルまでの1時間、じっくりお話が聞けたのです。

某大臣、空港建設に中国の支援をもらうか、世銀の支援をもらうか悩んでいるところらしい。「日本の条件は?調べてよ。」と気軽に聞かれたので、気軽に応えて調べ、後日ご連絡した。

日本のローンは条件によってさまざまのようである。空港建設案件リストには利子が0.7%から3%、返済期間もさまざである。最近のカンボジアの例をご報告した。利子0.7%。据え置き10年。返済期間30年。ふーん。勉強になりました。

これが中国のローンだと利子が2%で返済期間が20年なんだそうである。小国の経済規模では20年で返済できない。世銀も勿論もっと条件がよいそうだ。

で、違いは明らかなのになぜ小国の大臣の心は揺れるのでしょうか?

ここからは当方の憶測です。

最近、シンガポールと香港から太平洋島嶼国へのアプローチがすごい。航空協定などを締結し、飛行機を飛ばす様子である。その背景に何があるのか?

逃げたいお金があるようだ。シンガポール、香港と言えば、金融都市。タックスヘブン、マネーローンダリング、ありとあらゆる金融商品が用意され、世界のお金が集まるところ。

しかし昨今の汚職廃止運動、や、インターネットサーバーへの政府の介入の実態は、シンガポール、香港の顧客に不安を与えているようである。

お金を逃がす時は本人の市民権や、居住権も移動する。で空港が必要。で海底ケーブルのインターネットが必要。で豪邸を建てる土地が必要となってくるのである。

島嶼国、パスポート販売が有名だが、市民権販売もやっている。(豪州もやってますが。)一人数千万円とか。しかも彼らはカジノとか、島嶼国政府への新たな収入手段も持ち込んでくれる。

SIDS開始の2日前、サモア初のカジノがアギーグレイホテルにオープンした。小島嶼国といえばカジノ。SIDSを飾る、象徴的なオープニングである。

勿論、”転んでもただでは起きない”私は5千タラ(約3千円。経費ではありません。)握って現場調査を実施しました。背景にはインドネシア、中国のカジノ産業の気配を感じた。

この手の話は、知る人は語らない、内容なのだそうだ。しかし数字は語る。

ちょっとグーグルしただけですが、下記のグラフをみつけました。確実に洗濯したいお金は増えている。

マネーロンダリングの疑いある取引25%増加(シンガポール

http://media.yucasee.jp/posts/index/14201 より

1404439003994db03828419e23b86d744edcd43898.jpg