やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

水産庁取締船「みはま」パラオで早速海上救命!

"7 Filipino fishermen rescued"

FRIDAY, 10 OCTOBER 2014, Island Times

Seven Filipino fishermen were rescued and brought to Palau after their boat suffered an engine problem and drifted several hundred miles from their original location.

Bureau of Public Safety (BPS) Division of Marine Law Enforcement Chief Thomas Tutii disclosed that a Japanese fishery surveillance vessel, the “Mihama”, first spotted the Filipino boat some 145 Nautical Miles (NM) Southeast of Palau on Sunday, October 5, 2014.

Mihama.pdf

Islands Timesの記事

このブログで御伝えした水産庁の取締船「みはま」

10月4日からパラオEEZの10日間の試験航行に出発した。

早速2日目にフィリピン漁船を救出している。7名の漁師さんも救命。

エンジン故障で流されていたそうである。

無線とかなかったのでろうか?救助を求める手段がなかったのであろうか?

新聞の写真を見ると小さな船である。こんな船で遠洋漁業なんて信じられない。

「みはま」が見つけなければ海の藻くずとなって誰も知らないままだったのではないだとろうか?

きっとこんな海の事故が、ニュースにもならず、太平洋にはわんさかあるのであろう。

とにかく、太平洋の海は無法地帯、監視などないに等しい。繰り返すが日本が守るしかない。

<Mr マグロとオールジャパン

この水産庁取締船のパラオ派遣、水産庁と外務省の非公式な協力依頼を受け、今年初旬から側面支援をさせていただいている。

笹川太平洋島嶼基金運営委員長にして海洋政策研究財団の寺島常務の紹介で、水産庁宮原次長(当時、現水産総合研究センター理事長)にお会いする機会を得た。Mr マグロの異名を持つ宮原氏とはオールジャパンで太平洋の海を守りましょう、と意気投合。

この水産庁の取締船派遣、笹川平和財団羽生会長、日本財団海野常務とも情報を共有しつつ進めてきた案件である。笹川会長にも一度ご報告させていただいた。

<民間による歴史的、画期的、奇跡的事業>

これも繰り返しになるが、笹川平和財団日本財団が進めてきたミクロネシア海上保安事業は、下記の3点から歴史的、画期的、奇跡的な事業なのである。

1)戦後初めての、日本主導の、太平洋を海域を対象とした、法執行分野での、海洋安全保障支援事業である。

2)日米豪の3国協力枠組み(ミクロネシア3国を入れると6カ国)、及び官民の協力体制を構築した。

3)今から100年前の日本のミクロネシア委任統治以来の、ミクロネシア地域協力を日本が支援する事業。

2008年、この事業が立ち上げる際にご協力いただいた、元海上保安庁長官深谷憲一氏の言葉が忘れられない。

「政府がやったら、なぜミクロネシアなのかという事だけで数年がかかるであろう。」

我々の事業の成功がなければ、水産庁の取締船派遣もスムーズに進まなかったと断言してもよい。

水産庁と外務省への提言>

500-2000トンクラスの水産庁の取締船。追跡型の豪州パトロールボートとは役割が異なる。

しかしこの詳細を日本人も海外の関係者もそれほど知らないのだ。水産庁に聞いても、また水産庁のウェッブにも、ましてや英語の資料なんてない。他方、この8月ベトナムに供与が決まったのはこの水産庁の中古取締船6隻。

皆の疑問。

水産庁って何?」「取締船って何よ?」

疑問が疑惑に変わらない内に情報を公開すべし。

当方が、ミクロネシア始め米豪関係者に説明するのはここからなのだ。最近は1920年に開始した日本の遠洋漁業の歴史から説明している。ー 太平洋の海を知っているのは日本ぜよ。

よって水産庁には早々に取締船に関する英和の説明資料を作成する事を提案したい。ついでに戦後GHQが水産省にするよう提言した事も書いておいた方がよい。*

そして、外務省。

海外での日本の公権力行使になる本案件。まさに戦後レジームの脱却。しかも米国と自由連合を締結するパラオでの実施である。当然、米国との協議がされているはずだ。

ちなみに、笹川平和財団ミクロネシア海上保安事業を開始する際は、羽生会長自らワシントンD.C.を訪ね関係連邦政府国務省国防省、国家安全保障省等)と協議を重ね、当時のクリントン国務長官からもお墨付きをいただいたと記憶している。クリストファー・ヒル東アジア・太平洋担当国務次官補(当時)からの羽生会長宛の書簡も見せていただいた。もちろん支持を表明する内容だ。

加えてUSCGアレン長官(当時。メキシコ湾油流出事故でも活躍)にも笹川平和財団ミクロネシアの活動を支持すると、彼の演説の中に入れこんだ。(これは当方が動きました)

米国は、PACOMのキーティング元司令官が漏らしたように、デニス・ブレア元司令官(現SPFUSA会長)が求めているように(多分)、日本に太平洋に出て来て欲しいのだ。太平洋を守れるのは日本しかいない。これがPACOM司令官の認識である。(7−8割方の太平洋の魚を食べるのも日本人)

だから外務省には積極的に米国との協議を進める事を提案する。(もしまだでしたら。)

* 006回国会 本会議 第15号 昭和二十四年十一月二十四日(木曜日)から引用

ー「米国漁業使節団は、その報告書中、第四章第三節におきまして、水産省の設立をはつきりと勧告されておるのであります。いわく、「中央政府の漁業行政は、農林省の一局から庁へ昇格された。しかし、日本に対する漁業の重要性を考えるとき、日本に水産省のないのは意外である。国際問題を取扱うには、内閣において位置を占めることが最も有利であろう。」と述べ、さらに「本使節団は、緊密に接触した水産庁の人々には非常に好感を持つたが、同時に水産庁立法権が明らかに制限されていることが印象づけられた。もし、それが省であるならば、これらの人々は、全国的並びに府県別両面の漁業活動を調整する点で、はるかに有力になるであろう。」と述べられておられるのであります。ー