やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

笹川会長のパラオ名誉市民と使われない監視艇

先般、日本財団笹川陽平会長がパラオ名誉市民を授与された。

昨年、この件をパラオの高官に提案したのは当方である。

ミクロネシア海上保安事業を2008年から、さらに言えば太平洋島嶼基金を1991年から、笹川陽平氏と二人三脚で進めてきた当方にとっては、自分の事のように嬉しい。

最近「金を出しているだけじゃないか」という意地悪な言葉が入ってきたので書いておくと、太平洋島嶼基金ミクロネシア海上保安事業も笹川会長の意思と判断があったから開始でき、また推進できたのだ。

これは、事業を実際に立ち上げ進めてきた、私しか証言できなことなのでここに書いておきたい。

さて、なぜ私がパラオ名誉市民を笹川会長に、と提案したか。海保のおじさんによくいじめられた「ゴマをすりやがって」の類ではない。それより深刻だ。

パラオ高官「リエコ、ナカムラ大統領も心配しているんだが、笹川さんからもらった船が繋留されたままで使われていない。」

私「実はその話、監視艇を供与する前から米沿岸警備隊、豪海軍から船を供与するのは止めるよう指摘されていたんです。島嶼国は管理運営ができない。そもそも島嶼国政府自身にその意思がない、からと。」

パラオ高官「小型監視艇さえその状況だから、今度いただいく中型の船が実際に動かせるか、閣僚も疑問の声を出している。問題はこれだけ笹川さんにしてもらっているのにパラオ国内から批判する声まで出ていることだ。しっかりお礼をすべきだ。どんなお礼がいいだろうか?」

私「名誉市民がいいですよ。お金かからないし!」

パラオ高官「そうだ、そうだ、フリー(ただ)だ!」

多分、監視艇を供与した日本財団やそれを推進した国交省、海保も監視艇が繋留されたままであることに気がついているのであろう。海保からアドバイザーがミクロネシア諸国を巡回することとなった。

今回の島サミットで海上監視監視能力支援が首脳宣言に入った。しかし船舶の供与は慎重に進めた方が良い。米沿岸警備隊、豪州海軍が口を揃えて薦めていたのが「シップライダーズ」方式である。至急、海保、海自、水産庁(既にパラオで「シップライダーズ」を実施)、外務省、法務省等の関連省庁で調査、研究をすべきだ。「霞ヶ関ルール」ではなく合同で!