やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島サミットと漁業問題

島と海のネット総会で声をかけてくださった産経新聞、佐野慎輔特別記者とは10年以上前に、確か一度お会いしている。

今回声をかけていただいたのは、明確な下心があったそうである。

いただいたメールには

「60の手習いで、クジラやウナギ、マグロ問題と豪州および太平洋島嶼国を勉強していくつもりです。」

とあった。このブログをよく読んでいただいているのだそうだ。

年を重ねても新しい事に挑戦する姿勢、相手が年下だろうと、女だろうと差別区別しない姿勢は、自分もこうありたい,と思わずにはいられなかった。

佐野記者が読んでいるかも?と思うと急にやる気になって、以前書いた島サミットと漁業の問題を整理してみたくなった。

過去の議事録から漁業に関する項目を拾って、表にしてみた。

PALMFisheries.png

(クリックすると拡大します。)

漁業が大きく取り上げられた年が以前にもあった。

麻生首相が議長を務めた第5回島サミットだ。

しかし、今回の内容とは微妙に、且つ大きく違う。

4点上げてみました。

1.第5回はFFA, SPC, WCPFCが平行に出ているが、今回はWCPFCが中心と明確にしてある。

当方の憶測。一つは豪州の力が弱り、FFA, SPCが機能していない(今までも機能していなかったがさらに機能していない)。それから日本はFFA, SPCのメンバーではないが、WCPFCはメンバーである事。即ち影響力を、責任を、義務を行使できる。

2.IUU取締が入った事。本来FFAがやっているはずのIUU取締は、日本財団水産庁の取締船がパラオにチョコっと入っただけで、何もしていない事がバレてしまった。広い太平洋、登録もせず、爆弾等を使用するIUU漁船が山のようにいる。FFAや各国法執行機関が取締れるのは登録して、法外な示談金を吹っかけられる日本漁船だけ。

3.「日本漁船との間で相互利益となる関係の促進」これの意味がよくわかりません。

ミクロネシア連邦のカツオ漁船拿捕事件でわかった事は、冷凍機能等技術の向上で、わざわざ立ち寄る必要もないポナペに漁船が寄港する事で、ポナペ経済が潤っているそうだが、その事であろうか?

4.「太平洋島嶼国の船籍船への正当な導入」「海洋資源を適切に開発する太平洋島嶼国の権利」これは危ない話ではなかろうか?島嶼国が自前で漁船を運営できるわけない。正確にはその試みは散々支援されてきたができない事がわかった。(太平洋の遠洋漁業は日本が、沖縄の島人が元祖)そうであれば現在も蔓延る便宜置籍船方式で台湾漁船が拡大する事を意味しているのであろう。

しかも、管理義務は人任せで権利だけ主張する、というのは島嶼国らしい。