人の足下を見た、太平洋島嶼国の漁業管理政策が米国と太平洋島嶼国の関係を崩壊させた話である。
US pulls out of Pacific fisheries treaty
Giff Johnson 19 January 2016
http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/294458/us-pulls-out-of-pacific-fisheries-treaty
広大なEEZを保有する島嶼国がその水産資源を頼りに国家を運営するものの、自分たちでは遠洋漁業ができないので(日本のODAでかなり支援しているはずだが、冷蔵庫は室内バスケットボール場になったりしている。)外国漁船に漁業権を売るか、便宜置籍船として権利を売ってわずかな収入えるしかない。
ここに「水産業を知らない」世銀やアジ銀が「虚偽」のアドバイスをした。「皆さんが2円で売っている魚は100円で日本で売られているんですよ。もっと値を上げましょう。」
これを実行したのがPNAのVDS。 Parties to the Nauru AgreementのVessel Day Scheme.
今までよりも入漁料が3倍になり、一日漁船一隻から100万円程度の収入を得る事となった。
私も水産業の仕組みを知らない時は(今でも知らないがカツオ漁船拿捕事件でかなり学んだ)世銀の言葉を信じて「そんなのアンフェアトレード!」とこのブログにも書いていた。
アンフェアトレード - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa
PNAのVDSは結果として島嶼国に巨大な収益をもたらしたが、30年間続いた米国との一括漁業協定を崩壊させたのである。そんな高い入漁料は払えない、と米国の水産業界が突き返した。(正確には使用しなかったVessel Dayの2,000日を返してと要請)
その背景には漁業を知らない、米国国務省(商務省のNOAAではない)が協定にサインしてしまった事もある。
ミクロネシア連邦政府が行った日本のカツオ漁船拿捕事件も、せしめればいくらでも金を出す、と太平洋島嶼国政府が考えるようになったためであろう。水産業の流通システムも知らないで。即ち2円で売った入漁権が、100円で売られる中間の経費の事を理解せずに。
この米国との漁業協定によって太平洋島嶼国は年間80億円位の収入があった。
この収入の15%はFFA(フォーラム漁業局)の16のメンバー国の平等に分けられる。2015年は600,000USD。 これはニウエ政府の一年分の収入に当たる。
太平洋島嶼国にとっては一大事なのである。8月のオバマ大統領と太平洋島嶼国首脳との会議もこの件が主要議案であった。
Barring of US tuna fleet to affect Cooks' revenue
11 January 2016