やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島と海のネット第1回総会報告 その8

第7回島サミットのサイドイベントとして開催された「島と海のネット第1回総会」非公式な報告を勝手に書かせていただいるが、正式な報告会が下記の通り開催される。

「島と海のネット(IOネット)第1回総会の成果」

日 時:2015年6月17日(水)17:00~18:30(受付開始16:30)

場 所:東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル 2階大会議室

http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html

テーマ:「島と海のネット(IOネット)第1回総会の成果」

講 師:寺島 紘士(笹川平和財団 海洋政策研究所長)ほか

そして、これが今回の総会の目玉であったであろう、日本財団笹川会長のスピーチが掲載された。

「島と海のネット国際会議」

―基調講演―

http://blog.canpan.info/sasakawa/archive/4956

当方の非公式報告に戻る。

まずは下記のニュースから。

毎年1100人のサモア移民を受けれいているニュージーランドに9000人の応募があった、というニュースである。

"9,000 Samoans enter today's NZ migration ballot"

5 June 2015

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/275516/9,000-samoans-enter-today's-nz-migration-ballot

このニュージーランドの太平洋島嶼を対象とした移民制度以前より気になっていた。

NZ移民局のウェッブでさっと調べると、サモアの他に(サモアはNZのmandate territory, trust territoryであり、歴史的関係がある)キリバス、ツバルから各75人、トンガから250人を毎年受け入れている。

さて、島と海のネット総会であるが、ニュージーランドオークランド大学のポール・ケンチ教授が島は沈まない、という講演をされた。ちょうどこのブログでもその事を書いたところだったので、どうやって沈まないのかよくわかった。

しかし、ケンチ教授の講演の締めくくりの言葉には大いに反論したかった。

島は沈まないので他国へ移民は不要、と主張しているのだ。

移民の問題は、島が沈むか沈まないだけの話ではなく、人口増加や国家財政国家機能の限界があり、このような短絡的結論付けは絶対避けるべきだ。

トン大統領が、悲痛とも聞こえる声で訴えている事は、島が沈む事とは関係ない。

島が沈むとヒステリックに騒いでいるのはプロパンガンダ環境団体とメディアである。そしてそれに踊らされる一般市民。

島が沈もうが、沈まなかろうが、そもそも島が脆弱で、増える人口の許容範囲は限られ、しかもそこが国家として独立させられてしまっている事への、安全保障上の問題である。

ケンチ教授と東大で島が沈まない、とう研究を継続するらしいが、財団が支援する内容ではない、と思う。今回の島と海のネット総会のお手伝いをさせていただいた立場として、意見は聞かれていないがこれはハッキリ言っておきたい。

そこで、最初のサモアの移民の話に戻る。

サモアは島が沈むと騒いでいない。

サモアは島が2つしかない。

海面上昇の影響は等しくあるはずである。

日本の数百の離島も海面上昇の話は出ていない。

サモアと日本の離島の共通点。移民する場所がある、という事だ。