やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

バヌアツの政変劇とチャイナマネー

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今年5月日本で開催された「島と海のネット」会議に招聘した、バヌアツのラルフ•レゲンバヌ国土大臣。帰国した彼を待っていたのは不信任案を突きつけた野党による政権剥奪であった。

 

バヌアツ政府の改革を進めるレゲンバヌ国土大臣。

彼の不在中にキルマン外相が野党に寝返り、野党から不信任案が提出された。

新しい政権でキルマンは首相になり、土地改革(豪州の金儲け主義の土地開発からバヌアツ人の利益を守ろうする動き)を進めていたレゲンバヌ大臣は野党に下った。

ニュースでは、3月にバヌアツを襲ったサイクロンの支援資金を前政権がしっかり管理しなかった事が原因、と流れたが、レゲンバヌ議員が明確に否定した。

政権を取ったグループは賄賂を受け取っていた嫌疑で裁判が待っていたのである。

裁判は行われた。政権与党の半分近い14名の議員が有罪との判決。

しかし、有罪判決を受けていた与党議長が、大統領不在中、大統領代理人の権限で全員に恩赦を与えたのである。

これが有効かどうか、の裁判がまた行われ、無効との判断が下り、14名の与党議員は有罪、牢屋行き、となったのである。

3月、日本で開催された国連防災会議で涙を流して同国のサイクロン被害支援を訴えたロンズデール大統領を覚えている日本人もいるかもしれない。

同大統領は先日議会解散を宣言した。

レゲンバヌ議員がいる野党は不信任案を提出し政権交代を狙っていたので解散という大統領の判断に不満の声も出ている。

 

当方はこれらの動きをバヌアツのFaceBookで追っていた。

私が5月にレゲンバヌ大臣を日本に招いた隙に、政変を招くきっかけを与えてしまったのではないか?と勝手に想像し責任を感じていたからだ。

この半年間、一瞬市民の暴動につながりそうな場面もあったがFaceBookや地元メディアが冷静な態度を呼びかけた。

バヌアツは80以上の島々と100以上の言語からなる国家である。太平洋島嶼国で唯一、独立運動中バヌアツ人同士が殺し合う状況があった国である。これはフランス政府と米国の土地成金が背後にいた。

 

今回の政変劇にも黒幕がいる。

シンガポールか香港の会社である。

彼等はタックスヘブンを目的にバヌアツ政府に航空建設や移民事業で攻勢をかけていた。その彼等が、大金を前首相のモアナ・カルカセス・カロシル議員に渡し、彼が今回有罪となった議員に配ったそうである。

バヌアツに逃げたいチャイナマネーが、人口25万人の後発開発途上国バヌアツ共和国の政治に混乱を招いている。

そしてその土台を作ったのは、旧宗主国英国、シティである。