フィールドスタディで集めたデータをKJ法でまとめ論文にしたのだが、この「KJ法」についてさらに書けという指示が指導教官からあり、川喜田先生の本を読んでいたら、アリストテレス、チャールズ・パースまで勉強せねばならない事がわかって実はこの数週間毎日唸ってる。
財団に入った1991年。笹川太平洋島嶼国基金はある意味暗礁に乗り上げ、羅針盤を失った状態であった。何も知らずに入団した当方にあった指示が
「自由奔放にやってくれたまえ。」であった。
「基金のミッションは?」と当方が訪ねると。
「それも自分で考えてくれ。そして自分で判断し、自分で行動して欲しい。」
その時の自分の反応はよく覚えている。困った表情を演じたが、心中でヤッターと叫んでいた。
ミッション、即ちガイドライン作りで利用したのKJ法だった。(ミッション=ガイドラインではなく、ガイドラインはミッションから導き出されるのでひっくるめて作業しました)
その後、KJ法は会議や、第2次ガイドライン作成等々で頻繁に利用してきた。
川喜田先生はご自身が発明したこのKJ法の理論的考察をチャールズ・パースのアブダクション(発想法)に求められたようである。
そしてこのチャールズ・パースのアブダクションはアリストテレス、プラトンまで遡る必要がある。
下記パースから引用。アリストテレスが提示した3つの論法。
演繹 - deduction - anagoge、
帰納 - induction - epagögé、
発想法 - abduction or retroduction - apagögé
"There are in science three fundamentally different kinds of reasoning, Deduction (called by Aristotle {synagögé} or {anagögé}), Induction (Aristotle’s and Plato’s {epagögé}) and Retroduction (Aristotle’s {apagögé}, but misunderstood because of corrupt text, and as misunderstood usually translated abduction). Besides these three, Analogy (Aristotle’s {paradeigma}) combines the characters of Induction and Retroduction."
Peirce, Charles S. 1896, | Lessons of the History of Science
<KJ法事件>
プラトン、アリストテレス、パースの原文を読まずにすまして、うまくKJ法(発想法)とまとめた論文を探していた。当然これに関する議論があるであろう、と探しているのだがない!
代わりにウェッブで見つけたのが「KJ法事件」である。
「KJ法」という名称を巡る商標登録でゴタゴタあったようなのだ。
ネパールの地理学調査のために発明されたKJ法は、ビジネスマネージメントでその効果を想像以上に発揮した。
そしてその方法は色々に整理され、商品化されたようなのだ。
そうなると、学問として自由に語る事が制限されるのかもしれない。それがKJ法が理論としてあまり議論されていない原因かもしれない。。
川喜田二郎がKJ法(発想法)の理論的位置づけをその著書の中で説明しているのだが、原点となる"問い"が上げられている。
「人間が全人的に生きるとはどういうことか」
(発想法 あとがき 173頁 『川喜田二郎著作集4』)
「人はいかにして生きがいを感じうるか」
「人と人の心はいかにすれば通じあうか」
「人の創造性はいかにして開発できるか」
(続・発想法 200頁『川喜田二郎著作集4』)
これらは、当方が論文に応用したアマルティア・センの潜在能力の議論に非常に近いのである。
センの潜在能力に関する国際学会があるのだが、その総会が今年夏日本で開催される。
また無謀にも論文案申請をしたところ通ってしまった!
"Measuring Capability using the KJ method with the epistemology of the Rashomon effect" である。
この会議、アマルティア・センもキーノートで来るようなのだ。