海洋法に関する読書メモが増えそうなので新たなカテゴリーを設けた。
「海洋法」
この4月から同志社大学で坂元茂樹教授のご指導をいただける身分となった。
まだ3週間であるが、海洋法条約第121条の島の制度という短い条項に関連し、Symmonsの下記のペーパーを読んでいる。
Symmons, C. 2014. Maritime zones from islands and rocks, (pp. 55-120.) in Jayakumar, S., Koh, T., Beckman, T. et al. The South China Sea disputes and law of the sea. NUS Centre for International Law.
島か岩か? 島とは何か? 岩とは何か?
太平洋島嶼国を26年やってきたので人ごとではない。
動いている砂州はどうなるのか?とか、沈む島はどうなるのか?とか色々考えてしまう。
条約解釈とは何か?アート、芸術だと言う人もいるそうだ。坂元教授が書かれた「条約解釈の神話と現実」という論文があるというので早速拝読。
難しいので感想は書けないし、書かない。
坂元茂樹「条約解釈の神話と現実ー解釈学説対立の終焉が意味するもの」世界法年報
Vol. 2003 (2003) No. 22 P 30-61
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yearbookofworldlaw1986/2003/22/2003_22_30/_article/-char/ja/
読みながら思い出したのが自分の博論で方法論を議論した個所である。フィールド調査でオープンエンドのインタビューデータをどのように整理、分析するか?
ここで認識論に少し触れた。その一つが「羅生門効果」
黒澤明監督の映画「羅生門」である。映画が海外で最初に注目されたのと同じく、話の構成が認識論で議論されたのも海外が先のようだ。まとまったペーパーで出ているのは文化人類学者のカール・ハイデガーの下記の論文だ。話が逸れるがこの方、現地で消息を絶ったロックフェラー家の子息とパプアニューギニア入りしている。
Heider, G. K. 1998. “The Rashomon Effect: When Ethnographers Disagree.” American Anthropologist New Series 90 (1): 73-81.
黒澤監督の「羅生門」は芥川龍之介の小説『藪の中』が使われている。
事件に関係した証人達が全く別々な証言をする様子が書かれている。これをまとめたのがハイデガーのペーパーだ。文化人類学者が同じフィールドで調査しても全く違う観察をする理由を分析する。
そして当方は違ったデータから一つの結論を導く方法をアリストテレスの3つの論法で説明してみた。特に最後のapagögéは川喜田二郎氏の発想法につながる。
これも、芸術、神話の世界と言えるかもしれない。
演繹 - deduction - anagoge、
帰納 - induction - epagögé、
発想法 - abduction or retroduction - apagögé
海洋法、まだ3週目だが奥が深い。