やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

太平洋諸島フォーラム域外国対話の堀井巌総理特使声明と島嶼議連の提言

<島嶼議連提言の成果!>

先週、サモアで開催されていた第48回太平洋諸島フォーラムの域外国対話に出席された堀井巌総理特使(外務大臣政務官)のステートメント が外務省のウェブに掲載されていた。

 

太平洋諸島フォーラム域外国対話における 堀井巌総理特使(外務大臣政務官)によるステートメント 9月7日,サモア独立国・アピア

http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/ocn/page3_002220.html

和文 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000289034.pdf

英文 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000289035.pdf

 

なんと海洋安全保障がしっかり明言されているではないか!

実は島嶼議連(古屋圭司議員会長)が2月ほど前、麻生大臣、岸田大臣に提出した提言がどうなるのか心配していたのだが、外務省はやる気のようである。

 

 

  

(堀井巌総理特使(外務大臣政務官)によるステートメントより)

特に,日本は,相互に密接に連関する以下の3つの側面における取組 に焦点をあてます。

(1) ルールに基づく海洋秩序の強化及び法執行を強化するための海洋安 全保障・海上安全面での能力構築

(2) 海洋資源の持続可能な活用

(3) 海洋環境の維持・保全

これらの取組を進める上で,我々は,太平洋島嶼国における持続可能な 発展を実現するというゴール並びにSDG14及び国連海洋会議の成果に 十分留意する考えです。

 

<外務省のやる気への懸念>

この4、5月に講演の機会をいただいた海洋議連、島嶼議連。資料を確認する中で前回の島サミットで海洋問題を、具体的には「マグロ」の件を扱っていたことを思い出した。下記に引用する。

水産庁にも確認したが、これらの合意を進めるよう、官邸からも外務省からも何の連絡もなかった、と言う。日本政府が太平洋島嶼国と合意した事が守られていないのだ。

特に「IUU漁業を根絶するために必要な措置をとるべく緊密 に協力するコミットメントを確認した。」と言う箇所だが、水産庁の取締船をパラオに派遣したのみである。しかも外務省も水産庁もこの功績を一切公表しない、と言う方針だと言う?なぜ?

 

今回のフォーラム総会コミュニケではこのIUUを肝心の島嶼国政府が便宜置籍船と言う形で、台湾、北朝鮮などに旗を提供し推進している事が明らかにされているのだ。ニュージーランド、豪州のインテリジェンス機能で改善とあるが、日本が支援する可能性はないのであろうか?北朝鮮の漁船が漁業だけやっているとは思えないし、日本の安全保障の問題にも繋がってくる話ではないか?

これは次回書きます。

 

 

 

第7回太平洋・島サミット(PALM7)「福島・いわき宣言-共に創る豊かな未来-」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000081725.pdf         

9 大洋・海洋問題・漁業

44 首脳は,太平洋が太平洋諸国の繁栄の基盤であることを認識し,海洋資源及び海洋環境の 持続可能な開発,管理及び保全に対する統合アプローチの重要性を再確認した。この関連で, 首脳は,「海洋:命と未来」に関するパラオ宣言(2014年),パシフィック・オーシャンスケープ枠 組み(2010年)及び太平洋島嶼地域海洋政策(2005年)に留意した。首脳は,海洋環境,海 洋安全保障,海洋の安全,海洋監視,海洋科学調査・観測及び海洋資源の保全並びに経済成 長を促進し,及び生活と食料安全保障を改善するための持続可能な漁業管理等の分野におい て,二国間及び多国間の協力を一層強化する決意を強調した。

45 首脳は,太平洋地域の一部のまぐろ資源の持続可能性が危機にさらされているという最新 の漁業資源評価に留意し,公海における協力を含め,中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC) の枠組みの下で,太平洋諸島フォーラム漁業機関(FFA)及び太平洋共同体事務局(SPC)を 含む関係団体の協力を得て,効果的な保存管理措置の策定のために協力を増進することをコ ミットした。

46 首脳は,PIF島嶼国の主要な収入源を損ない,太平洋地域の漁業資源の持続可能性を脅か す違法・無報告・無規制(IUU)漁業に強い懸念を表明した。太平洋の漁業資源の持続的利用 から恩恵を受けている国として,首脳は,IUU漁業を根絶するために必要な措置をとるべく緊密 に協力するコミットメントを確認した。

47 PIF島嶼国の首脳は,日本による漁業関連の支援を評価し,長期的な経済発展を目指して 太平洋漁業の活力ある持続可能な管理を向上させるためには,地域機関を通じたものを含む 継続的な支援が必要であることを強調した。首脳は,漁業資源の持続可能性の向上や,適当 な場合には,この地域における日本漁船との間で相互利益となる関係の促進等,日本とPIF島 嶼国間の漁業分野における長期的な協力関係の重要性を強調した。

48 首脳は,近代的なマグロ漁船の太平洋島嶼国の船籍船への正当な導入を含め,適当な場 合には,自国の海洋資源を適切に開発する太平洋島嶼国の権利を認識した。PIF島嶼国の首 脳は,日本と太平洋島嶼国間で漁業分野における協力関係を模索する必要性を強調した。

49 首脳は,太平洋における平和と安全の重要性に改めて言及し,国連海洋法条約及び関連実施協定を含む,普遍的に認められている国際法の原則に従い,海洋秩序が維持されるべ きことを再確認した。首脳は,自制的行動をとり,武力による威嚇又は武力の行使に訴え ることなく国際紛争を平和的に解決することの重要性を強調し,海洋の安全及び海洋安全 保障の分野において協力を促進する意図を再確認した。