やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島サミット特集:安倍総理スピーチの分析評価 -やっと漁業の話

1997年に開始した島サミットは以前書いたように、プルトニウム輸送に対する執拗な太平洋諸島フォーラムへの対応として、主に外務省と電事連が仕切って来たのである。

2011年までは。。

それが本来の島サミットに方向を変えたのが2012年の第6回島サミット。ここで私は(笹川平和財団ではありませんよ!)海洋問題と米国の参加を提案して、大洋州課課長がわざわざ「入れましたよ」と連絡をくれたのを覚えている。確か飯田慎一さん。

それでも水産庁は「蚊帳の外」だったのだそうだ。なので飯田慎一さんが折角首脳宣言に入れてくれた海洋やマグロの話は誰もフォローしなかった。

今回の島サミットは違う。安倍総理の席に水産庁幹部がしっかり同席し、日本の漁業活動を守った、と噂で聞いている。そうであれば「天晴れ!」

スピーチではなんと言っているか?

「皆様には,日本の漁業活動に,格別の配慮をお願いしたいと思います。他方,皆様自身の警備力,資源保存の能力を高める力添えは,日本が,自信と誇りをもって担える役割であると思っています。」

第8回太平洋・島サミット(PALM8)首脳会合における安倍晋三日本国内閣総理大臣の冒頭発言

(平成30年5月19日,福島県いわき市

http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/ocn/page4_004025.html

首脳宣言では?

15 首脳は,関連する環境面及び経済面の要素を考慮に入れつつ,漁業資源を科学的根拠に基づいて管理することの重要性を認識した。太平洋共同体事務局による最新の科学的な漁業資源評価に留意しつつ,首脳は,まぐろ,カジキ,サメ資源等の高度回遊性魚種の持続可能な利用を確保するために,重要事項に関する共同提案を作成し得る機会の特定を含め,中西部太平洋まぐろ類委員会における協力を継続する意図を再確認した。

16 漁業分野における長年の協力実績を踏まえ,首脳は,適当な場合には,太平洋の漁業資源の持続可能な利用を確保するための日本と太平洋諸島フォーラム加盟国間の互恵的な漁業取決めを通じたものを含め,漁業を発展させることを目的とした永続的な協力関係の重要性を再確認した。この文脈で,日本は,漁業の持続可能な管理を確保するために,国連海洋法条約を含む国際法に従い,自国の排他的経済水域において水域に基づく管理を実施することへの太平洋諸島フォーラム加盟国の首脳によるコミットメントに留意した。

17 首脳は,太平洋諸島フォーラム島嶼国の主要な収入源を損なうとともに漁業資源の持続可能性を脅かす違法・無報告・無規制漁業を根絶するために,地域における既存の監視制御及び船舶監視の枠組みを考慮に入れつつ,監視制御及び船舶監視についての協力を深化させることへのコミットメントを表明した。

特に16項の次の部分である。「国連海洋法条約を含む国際法に従い,自国の排他的経済水域において水域に基づく管理を実施することへの太平洋諸島フォーラム加盟国の首脳によるコミットメントに留意した。」

これ、笹川陽平パラオ名誉市民が支援してしまっている同国の海洋保護区への批判でしかない。

さて、違法操業監視だが、日本財団式の船の供与は止めた方が良い。財団が供与した船は繋留されたままで、パラオの閣僚が心配していた。正解は水産庁がやっているシップライダーズ方式だ。