やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

島サミット・原子力・海洋法

来週開催される第8回島サミット。

きっかけは日本のプルトニウム輸送に太平洋島嶼国が地域政府組織(太平洋諸島フォーラム)として非難決議を1992年から出してきたこと。その対策として電気事業連合会が外務省を動かしたのである。

当時外務省の外郭団体国際問題研究所会長は平岩外四さんだった。東京電力会長だ。国際問題研究所は東電から資金援助を受け、事業方針の影響も受けていた。

 

私は、渡辺昭夫先生の関係で目の前でこれを見てきた。当事者である。

 

島サミットは、日本の原子力、エネルギー資源安全保障のための対島嶼国対策だったのだ。

ここら辺は一つ目の博論に書いてあります。英語なので、知らないのは日本人だけ、という話になるのか。

https://ourarchive.otago.ac.nz/handle/10523/7139 (当方の博論はここでアクセスできます)

 

 

このゴールデンウィークに田中則夫先生の海洋法の本を読んでいて思い出した。

太平洋はほぼ全域がEEZに覆われている。よって日本の輸送船はこのEEZ海域を通ることとなる。小田滋先生は公海での核実験が国際法上どうか、という議論をしているらしい。これは読んでみたい。プルトニウム輸送船の通過は無害通航になるのか。

小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂高文社、1956年)245-246頁。

小田滋『海洋法二十五年』(有斐閣、1981年)25-28頁。

 

 

島嶼国の要請はどうやら事故があった場合お保障金、のようだ。

 

「(1)核燃料輸送については、PIF側より首脳会議コミュニケを引用しつつ、沿岸国としての懸念を改めて表明すると共に、損害賠償についての日、英、仏との対話の継続に対するハイレベルのコミットメントを求める旨発言があった。

 また、民間(電事連)のイニシアティブによる10億円の「太平洋島嶼国協力開発基金」設立を「善意の基金」として歓迎する旨発言があった。」浅野政務次官のPIF域外国対話出席について(概要と評価)平成12年11月より。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/pif/syuseki.html

 

 

2011年の大震災以前は、すなわち電事連が元気で、プルトニウム輸送が必要とされていた頃、島サミットに参加した太平洋島嶼国首脳は電事連がアレンジした事業に参加していた。原子力発電所見学とか、食事会とか。私も一度参加した事がある。

 

今回のサミット会場が福島、というのはどう受け止めていいのか。。複雑だ。

 

<追記>

平岩外四さんを検索したらウィキに下記の記述があった。戦争でニューギニアに行かれたのだ。27歳の頃のはず。

「太平洋戦争で陸軍に召集される。配属されたニューギニア戦線でジャングルを敗走し、飢えと熱病のため、平岩のいた隊は107名中、最後には生存者7名という地獄の体験をする。この体験は、平岩に人生を達観させる契機となった。」

 

そうだ全部このブログに書き出したのでした。太平洋諸島フォーラムのプルトニウム輸送に対する非難決議。1992年から2006年まで15年間出され続けたのだ。その代償が日本のODA 案件となったUSPNetでもある。この資料は1つ目の博論のAppendixにつけてある。

 

太平洋島サミットと日本の原発政策