やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『インドネシア領パプアの苦闘』井上 治 (著)

 f:id:yashinominews:20210611095124j:plain

 

西パプア問題を日本人は知らない。

資料がほとんどないからだ。インドネシア専門のジャーナリストに聞いたことがあるが、西パプア問題は解決している、と言われて驚きを超え怒りを感じたことがある。

しかし、私には西パプア問題を語れるほどの知識はない。

 

2013年に出版された比較的最近の本があった。この本、読んでよかった。

 

『インドネシア領パプアの苦闘―分離独立運動の背景』2013/11/1

井上 治 (著)

 

著者は拓殖大学政経学部教授だ。丁寧に、バランス良く書かれている印象を持った。

概要は出版社のメコンのサイトにあるのでここには書かない。

 http://www.mekong-publishing.com/books/ISBN4-8396-0275-8.htm

 

が、パプア問題の発端は、きっと日本人にあるのだと思った。それはこの本には書かれていない。

西パプアを開拓し、独立インドネシア運動に西パプアを入れたのも、日本人だったのであろう。勿論、こんな結果になるとは思わずに。それを知ったのは柳田の文章である。オランダ領であったパプアは全く開発されておらず、日本人開拓者がオランダ人との合弁企業で開拓しようと試みたことが書かれている。戦争中にビアク島を開拓し、航空路を作ったのは日本軍だ。

 

 そしてインドネシアがパプアを自分たちの領土と主張する要因を作ったのも日本であろう。この本の22−23ページに、1945年7月11日日本軍政下のインドネシア独立調査委員会でインドネシアにパプアを入れるかどうか議論され、同年8月17日の独立宣言でニューギニア島西半分のパプアを含むこととしたことが書かれている。

もちろん、当時の日本人は現在のような状況になることは夢にも思っていなかったであろう。

しかし、遠因は日本に(も)あるのだ。

西パプアでは未だに虐殺が続いているというニュースも出回っている。国連も無視し、PIF総会も後ろ向きだ。

日本人が知らない、という話で済ませて良いのか?