やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

バヌアツ - ミュージカル南太平洋の舞台から中国軍事基地へ(4)

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サルワイ首相の真意

人口が急増するバヌアツの最大の問題は、首都ポートヴィラに集中する離島からの人々をいかに拡散させるか、である。90以上ある言語種族からなるバヌアツは、数千年の歴史の中で常に部族間の闘争があった。ポートヴィラでの人口集中は住居施設開発の限界、その他インフラ整備が追いつかない中で、種族間の闘争や青年層の就職を始め多くの社会問題を生み出している。

 

中国が港湾を新たに建設したエスピリト・サント島は長らく第二の都市としてその開発が期待されていたが、実際に手を差し伸べたのが中国だったのである。

筆者が、2014年に訪ねた時は、米軍が建設したカマボコ型の建物がそのまま利用されていた。即ち70年間放って置かれたのだ。サルワイ首相が、レゲンバヌ外相がインフラ支援をしてくれる中国政府を讃えるのは理解できる。

サルワイ首相が

「軍艦が寄港できるキャパシティがあるのはバヌアツのアイデア、そして人々を支援する事を目的」

と言ったのは中国からの軍艦はじめ多くの船を寄港させ、島の産業、雇用を生み出そう、というアイデアなのであろう。

 

Vanuatu PM defends China deals but vows to oppose any new foreign military base

https://www.smh.com.au/politics/federal/vanuatu-pm-defends-china-deals-but-vows-to-oppose-any-new-foreign-military-base-20180412-p4z96m.html

4月9日の最初の記事を書いたDavid Wroe氏の2度目の記事。これを読むと軍事化を容認しているとしか思えない。

 

5月に迫った島サミットを主催する日本政府はこのバヌアツで起こっていることを認識しているだろうか?

今回この文章を書くに当たって読んできたニュースの中に、息を飲むようなサモア首相のコメントがあった。

 

「太平洋地域に脅威が及ばないのであれば、中国の軍事基地がバヌアツできることは何の問題もない。米国は既にグアムを軍事基地としているが地域に何の脅威も与えていないではないか。」

 

Pacific Islands Forum head says China base OK if no risk posed

2:27 pm on 11 April 2018

https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/354777/pacific-islands-forum-head-says-china-base-ok-if-no-risk-posed

 

太平洋島嶼国にとっては中国も米国も同じなのである。そしてこのサモアのトゥイラエパ首相は島サミットで安倍総理と共同議長を務めるはずだ。トゥイラエパ首相もバヌアツのレゲンバヌ外相の父親と一緒に1988年笹川平和財団の主催で北京を訪ねている。