やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

バヌアツ - ミュージカル南太平洋の舞台から中国軍事基地へ(3)

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 カジノ・タックスヘイブンの国

 

100年近い、英仏共同統治の植民の中でインフラの開発がされたのは英仏人が住む都市部と牧畜地だけである。

独立を果たした1980年以降、豪州がバヌアツの主要援助国となったが、その状況は全く変わらなかったどころか悪化した。今まで宗主国支配者として滞在していた英仏人が去った事で、離島にあったダムの施設まで管理運用できず、使用できなくなってしまった例もある。

 

それでは、旧宗主国英国は、また新たに援助国となった豪州はどのような目算でバヌアツの独立を支援したのであろうか?

タックスヘイブンである。

英国はカリブ海の英領、コモンウェルズ諸国で行っていたタックスヘイブンをバヌアツにも導入した。当時は英国の開発省、外務省が真剣にオフショア金融地としてバヌアツの独立を計画したのである。そして世界中の法律会社がバヌアツにオフィスを構えたのが1970年代。しかしこのようなシステムは越境犯罪に利用されやすい。

 

太平洋で最初にオフショアギャンブルが行われたのはバヌアツで1989年。「ドクトル・ジバコ」の俳優オマール・シャリフを広告塔にして開始した。シャリフ氏はカード好きで有名だったのだ。さらにボブ•ホーク豪州元首相も関与したオフショアギャンブルがさらなる越境犯罪を呼ぶ。タックスヘイブン、カジノ、マネーロンダリングの世界的中心としてバヌアツは発展する。このような越境犯罪のインフラに世界中のビリオネラー、犯罪者が群がってくる。

 

オマール・シャリフ関わったオフショアギャンブルの話

yashinominews.hatenablog.com

 

 

それでは人々のインフラはどうか?

豪州政府はほとんどインフラの支援をして来なかったのである。それだけではなく世界銀行と共にパラオで行われているような土地の長期リースを推進し、リゾート地として切り売りをしたのだ。