やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

Bullyなのは中国?オージー?ー遠藤博士の記事への意見

 

「APEC執務室に乱入した中国代表──国際スタンダードなど守るはずがない」

2018年11月19日(月) 遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/11/apec-2.php?fbclid=IwAR1Cd-fytANWy7rXbvwKQaDZEYFz-D-PQJSXkS1rBVeWDUb0T1k74tJC3W4

 

産経の榊原智論説副委員長が推薦していたので期待しながら読んだのだが、考え込んでしまう内容であった。

まず事実関係の誤認。

「中国外交部の高官は、「(乱入は)真実ではない」と否定しているとAFPは伝えているが、オーストリアのメディアは、「首脳宣言が出されなかったのは初めてでも、中国が難癖を付けて文言を調整させようとAPEC議長国の執務室に殴り込んだのは、これが初めてではない」と伝えているようだ。アメリカ発の中文メディアが報道している。」

と遠藤博士は書かれている。多分オーストラリアでオーストリアではない。オーストリアがAPECをわざわざ取材するだろうか?そうであれば中国の殴り込みは初めてでない、というのは、9月のナウルでの太平洋諸島フォーラムでの中国代表のbullyな態度のこと。

これだ。

"This is not the first time Chinese officials have been involved in a tense incident at a regional meeting.At the Pacific Islands Forum in September, Nauru’s president demanded China apologize after its delegation walked out of a meeting when the host refused to let an envoy speak until island leaders had finished.”

考え込んでしまったのは、遠藤博士が批判する中国の態度だが、島嶼国側から見ると散々オーストラリア人(若しくは米国フランス)にやられてきた"bully"な態度とドッコイドッコイ。

今でも主権など一切無視して豪州連邦警察がバヌアツの銀行に乗り込み書類を押収することもある。豪州側の立場に立てばこれも理解できる。バヌアツに法執行、法遵守精神などない。そしてバヌアツの主権を利用して越境犯罪を行っているのは豪州人だ。

島嶼国のリーダー達は戦後70年(いやもっと長く)こういう経験をしてきたのだ。中国か豪州か、どちらがいい?と問われれば、リーダー達にとっては無条件にお金をくれる中国であろう。

国際司法裁判所の判決を無視する中国、というのも考えさせられる。捕鯨裁判では日本は世界の悪者になっている。捕鯨裁判の判決の内容をメディアもニュージーランド外相も正確に理解していないが、裁判所が間違ってますよ、日本批判は止めなさいとは言わない。

何か国際法に唯一の正義がある、と勘違いしていないだろうか?国際法条約は矛盾で満ちている。