日本のIWC脱退に関連し、日本がIWCのオブザーバーの地位で日本のEEZ内での捕鯨を行うことは国際法違反である、というコメントがSNSにあって国際法とはUNCLOS65条の事かと思い確認してみた。
「いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する。」
日本語では「通じて」というのが国際機関との関与を示す表現であり、下記の英語ではwork through がそれである。どちらも正式加盟国であるかオブザーバーであるかを規定する表現ではない。
"the case of cetaceans shall in particular work through the appropriate international organizations for their conservation, management and study. "
第六十五条 海産哺乳動物
この部のいかなる規定も、沿岸国又は適当な場合にほ国際機関が海産哺乳動物の開発についてこの部に定めるよりも厳しく禁止し、制限し又は規制する権利又は権限を制限するものではない。いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する。
Article 65, United Nations Convention on the Law of the Sea Marine Mammals Nothing in this Part restricts the right of a coastal State or the competence of an international organization, as appropriate, to prohibit, limit or regulate the exploitation of marine mammals more strictly than provided for in this Part. States shall co-operate with a view to the conservation of marine mammals and in the case of cetaceans shall in particular work through the appropriate international organizations for their conservation, management and study.
他の議論、判例、解釈を知らないのでさがしていたら興味深い資料を見つけた。これは日本語だけ見ているとわからない箇所である。このペーパーを書いたPatricia Forkanは動物保護団体の方なのでかなり偏った見解である事が予想できる。また65条、IWCにも米国代表として深く関わっている。
The Legislative History and Interpretation of Article 65 of the Law of the Sea Convention Testimony Submitted by Patricia Forkan
http://www.hsi.org/assets/pdfs/HSUS_testimony_LOS.pdf
このペーパーでは65条のthe appropriate international organizations、日本語では適当な国際機関だが、これが当初単数のorganizationであったのを複数にしたのは日本提案なのだそうだ。当時IWCしかなかったので当然IWCがそれであるという認識であったが、NAMMCOという捕鯨国からなる組織に日本が入る可能性を示唆する事が指摘されている。
IWCを唯一の適当な国際機関にしなかった日本の提案はこの日を予想して、のことだったのだろうか?即ち日本はIWCを脱退する日を65条の議論をしていた70年代の時点で既に予想していたのであろうか?