やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

日本ーバヌアツー中国を結ぶ仮想通貨犯罪(6)世界最貧で世界一幸せな国バヌアツ

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 ここで少しバヌアツという国について書いておきたい。

 

1. 3千年の多民族国家

 ニューカレドニアから飛行機で1時間。南北にYの字型に100位の島が散在し、100位の言語、すなわち民族がいる。

 人間の歴史は約3千年でパプアニューギニア東部から渡ってきたオーストロネシア語族。部族間の闘争は激しく、現在の国家としての枠組みが統一された形跡はない。なので、1980年の独立は3千年の歴史で初めての試みとなった。これは900の言語をもつパプニューギニアも同じことだ。

 

2. 英仏共同統治

 バヌアツがタックスヘイブンの国として独立した背景でもある。1906 年、あの永遠の敵国関係にある英仏がこの地で手を結んだ。世界にも珍しい植民地体制、共同統治(コンドミニアム)という。理由は日露戦争の勝利した日本の脅威だったか、ドイツの植民地拡大だったか忘れました。この2カ国統治によってバヌアツは未だにフランス系と英国系に分かれる。例えば学校や教会は未だに英仏ある。

 1970年代、バヌアツの独立を支持したのは英国。土地を多く持つ、すなわちビジネスをしていたフランスは軍隊まで出して反対した。隣のニューカレドニアにその独立の影響があるのを恐れた。そこで英国が提案したのが所得税を取らない「タックスヘイブン」の国。これ英国政府の正式な提案である。これが今起こっている仮想通貨犯罪など越境犯罪の温床となった。実際の話はもっと複雑だがここでは簡略に書きました。

 

3. 世界最貧で世界一幸せな国

 独立したとたん、英仏は自分たちに必要なインフラ、すなわち通信や道路など首都のインフラだけ残して離島の開発は放っておかれた。(最初から放っておかれたのだが)独立30年経っても離島に通信は届かなかった。バヌアツは「後発開発途上国」という途上国の中でも遅れた国にカテゴライズされた。他方、別の指標「幸福度」を図る調査では世界一幸せな国にも選ばれているのだが。

 離島の開発は進まず、出生率は急上昇で、職がない離島の若者は首都のエファテ島にくる。住む場所もなく違法な活動、犯罪は増え、社会不安は増す。主要援助国オーストラリアがとった方法は土地を長期リースしリゾート開発くらいしかしない。ニュージーランド政府が主導した季節労働の短期就労制度は大成功だ。しかし根本的問題は解決しない。

そこに現れたのが中国だ。パスポート販売だ。サント島の港湾事業だ。

そしてPlustokenの仮想通貨犯罪だ。