やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

Marine Mammal Conservation and the Law of the Sea by Cameron S. G. Jefferies

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 日本のIWC脱退で国連海洋法条約違反だー、とメディアや国際政治、経済学者が騒いでいて、私の守備範囲ではないが、その対象となるUNCLOS65条の議論をいくつか読んでみた。

 さて、あれだけ騒いでいた件だが今のところ日本を訴える動きは聞こえてこない。シーシェパードの動きも聞こえてこない。私も全く忘れていた。図書館に本を注文したことまで忘れていて、先日「来てますよ」と言いわれ何が来てるんだろう?と思ったらCameron S. G. Jefferies博士の"Marine Mammal Conservation and the Law of the Sea "であった。

 第5章"The Case for an Implementing Agreement Pursuant to article 65 and 120 of UNCLOS and the Creation of an International Marine Mammal Commision" 。数十ページに渡って65条と120条の作成過程と解釈などがまとめられている。

 

 

 あのパトリシア・フォルカン女史は重要な人物なようで、私が参照した公聴会資料をJefferies博士は参照し1節をまとめている。

 一つ私が誤解していた点がある。下記のorganizationsを複数にしたのは日本提案であることは間違いないようだが、その意味は、cetaceanの中に既に地域漁業機関で管理しているものがあるので、そのまま管理を継続するためであった。私は妄想して新たな捕鯨管理機関を日本政府が予言していた!とか過去のブログに書いてしまった。

"the case of cetaceans shall in particular work through the appropriate international organizations for their conservation, management and study. "

 

 そしてパトリシア・フォルカン女史と一緒に動いたの米国大使 Elliot Richardson 彼は、ウィキ情報だが、司法長官としてウォーターゲート事件に関わり、国務長官、国防長官なども務めた人だ。なぜ彼がUNCLOSのネゴシエーターになったのか?

 まだ読んでいないが面白うそうな資料があった。

Crafting the Law of the Sea: Elliot Richardson and the Search for Order on the Oceans (1977-1980), Vivek Viswanathan, Harvard College 2009

https://www.hks.harvard.edu/sites/default/files/centers/mrcbg/files/Viswanathan_2009.pdf

  UNCLOSが、65条が米国政治に利用された、のかもしれない。1977−1980年までのElliot Richardsonの記録だ。

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<追記>

著者のCameron S. G. Jefferiesのツイッターを見たら、グレタさんの気候変動ストライキに学生も参加せよ、という思想の持ち主で、この学術書がどこまで環境イデオロギーから自由な立場で書いているか疑問だ。