やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

最も不明確な条項ーUNCLOS65条

パトリシア・バーニー女史の65条に関するペーパーがあった。

”Marine Mammals: Exploiting the Ambiguities of Article 65 of the Convention on the Law of the Sea and Related Provisions: Practice under the International Convention for the Regulation of Whaling Chapter”. The Law of the Sea: Progress and Prospects. David Freestone, Richard Barnes, and David Ong. 2006, pp.261-280

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パトリシア・バーニー(Patricia W. Birnie)
オックスフォード大学で法律を修め、エディンバラ大学から博士号を取得後、エ
ディンバラ大学及びロンドン大学政治経済学院で教鞭をとる。在マルタ国際海事
機関の国際海事法研究所のディレクター等を歴任。主著に、International
Regulation of Whaling (2 Vols., Oceana Publications, 1985) がある。

バーニー女史曰く65条は海洋法条約の中で最も不明確な条項である、ということで、これが詳細に議論されている。(ついていけない)

"Article 65 is thus one of the most opaque articles in the LOSC,"

まずは鯨の定義だ。条項の定義と科学的分類は必ずしも一致していないようである。どこまで魚でどこまで哺乳動物で。。

さらに捕鯨資源管理は第一次世界大戦以前から「捕鯨会社」による管理が試みられ、第二次世界大戦後には、水産資源管理に関してさまざまな条約、協定、合意が作成され、海洋法条約65条との関連は明確ではないことも、この65条を不明確にしている要因である。

65条の複雑な議論の詳細が書かれているのだが、理解しきれないし、まとめられない。少なくともここで言えるのはIWC脱退が国際法違反である、と言い切るためには相当な立場(反捕鯨)と、65条及び関連する条約、協定、国際組織の動きを理解していなければできなはいずだ。メディアなどで日本がIWCを脱退して捕鯨を継続する事が国際法違反と主張する有識者達の詳細な議論を伺ってみたい。別に嫌みではなく純粋な気持ちです。

 

バーニー女史の本が和訳されている。これも読んでみたい。2013年に亡くなられたのだ。海洋問題、女性ががんばっているなー。

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