やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

太平洋島嶼国バヌアツの中国化 ー 剥奪される正義と報道の自由

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 太平洋島嶼国の中国化、言論統制は港湾支援を装って軍事基地化する動きよりも、ある意味恐ろしい。

 中国人に4千冊の旅券を販売するバヌアツ。その収入は国家予算の3分の1を占めている。この仕組みは同国の法秩序も崩壊させ、報道の自由を圧迫する結果に。一人のジャーナリストが労働ビザを剥奪された。

 この件、私もかなり関係している。ちょうど私が今年6月にバナアツを訪ねた時に起った事件だ。
 プラストークンという仮想通貨投資詐欺事件がバヌアツで、6人の中国人によって行われていた。(4名がバヌアツ市民として滞在)
 バヌアツ政府は事件の詳細を明かさず、しかも中国本土から中国の法執行官が飛行機で飛んできて、バヌアツ国内の法手続きを一切無視して連れ帰ったのだ。

 バヌアツ政府から労働ビザを剥奪されたバヌアツ・デイリー・ポストの編集長ダン・マックガーリーにプラストークンの情報をいち早く伝えのは私だ。日本語のSNSで逮捕翌日には情報が出回っていたからだ。日本人にも多くの被害者が出ているはずだ。日本人からも情報提供の希望の声があったので、少し追っていた。

 中国人(多分マカオの歯欠け駒のグループ)がパスポートビジネスと仮想通貨ビジネスをバヌアツにしかけ、それを主導しているのが現在の同国首相シャーロット・サルウェイ(ペンタコスト出身)だ。ダン・マックガーリーはこの事件があった翌月7月にこの首相に呼び出され恫喝された事を明かしている。下記のステイトメントを参照。
「ここが嫌いなら、本国へ帰れ」と。

 バヌアツ政府からの正式な理由は、業務の現地人化を怠っている、という内容。既に16年バヌアツに滞在するダン・マックガーリー氏は市民権を申請中で、市民権を得る前の政府の判断とも解釈できる。先月のヤップでの米国人弁護士殺害事件で私が指摘したように、島の人だけでは法執行やジャーナリズム、即ち正義の行動に限界があるのだ。だから外の人の力を借りる必要がある。しかもマックガーリー氏の件は現地を全く知らない外国人ジャーナリストが勝手に書いた記事とは違う。

 

 そう言えば有本香さんがバヌアツに入ると言っていたが、取材許可を得るのは難しいであろう。そして昨年開設した日本大使館はこの件を把握しているのか?重要な件なので太平洋に関心のある国会議員には伝えておきたい。

 

<バヌアツ・デイリー・ポストの編集長ダン・マックガーリー氏の声明>f:id:yashinominews:20191109083019j:plain