やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

矢内原忠雄「南洋群島の研究」と歴史教科書執筆

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 高校生の歴史教科書書き直し。ボディの部分が学術書みたいで高校生には難しい,ということで話題を変えることに。あまり世の中に明かしていけないらしいので詳細は書きません。
 
 関連資料をここ数日読み返した。
 矢内原忠雄の「南洋群島の研究」は植民が悪いとかセンチメントと言う人には是非読んでほしいですね。かなり量のある論文。この研究は1932年に矢内原があのIPR ー 太平洋問題研究調査会から委託されたものである。
 
 1933年現地調査を経て、日本語出版は1935年。1933年10月に恩師新渡戸がカナダ客死した事も出版が遅れた理由かもしれない。英訳本はさらに遅れて1939年。
 昭和12年、1937年に矢内原は東大を追われている。軍部を批判したのだ。英語版は1940年12月号IPRの機関誌にローラ・トンプソンが書評を掲載していると言う。読んでみたい。
 1954年にIPR京都会議が開催され矢内原も参加。日本の軍国主義全体主義に決して戻ってはいけないと主張したそうだ。
 それにしても矢内原が南洋の日本統治の様子をもっと手早く英語で世界に発信していればあの戦争はなかったかもしれない。宣伝や、プロパガンダを矢内原はどのように理解していたであろう?
 
 
ここ数日読んだ資料の一部。
 
「台湾・朝鮮に対する日本統治は,収奪による多くの被害を与えた反面,現地の人々への技術移転の点では多少の役割をはたしてきた。」へーそうなんだ。。
溝口敏行 日本統治下における「南洋群島」の経済発展--1922-38年、 経済研究, 31(2): 128-134、1980
 
岡本浩明、太平洋戦争以前および終戦直後の日本のまぐろ漁業データの探索
 
矢内原の植民研究は左翼学者がキリスト教とばかり関連づけて議論しているようで、矢内原先生もそれは嫌だと言っています。基本はアダムスミスなのですがこれに関連した議論したのは息子さんの矢内原勝さんの論文しか見た事はありません。