やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ソロモン諸島台湾断交 ー マライタ島の動き (2019.11.25-12.4)

 ソロモン諸島台湾断交から3ヶ月。

英国女王が国家君主である。100前後の言語、民族のソロモン諸島がその歴史の中で統一した事はない。英国植民地支配で始めて植民地としての地域のまとまりができた。独立後も英国の女王を君主に迎え、英連邦国家の一員として、実際には豪州の支援を受けながらやって来たのだ。

チャールズ皇太子が電撃(?)訪問したが何か効果があったのか?これはニュースに出て来ないであろう。

主にSolomon Star Newsという地元メディアを FBでフォローしています。以下、11月25日以降のニュース一覧。

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Suidani lauds govt for listing Bina Harbour - Solomon Star News

心なしか反中のマライタ州スイダニ州知事のオーラが強まっているような気がする。
長年棚上げになっていたマライタ開発を中央政府が2020年の重要事業とした。(なぜ棚上げにしていたのであろう?)
メインは米国が支援するビナ湾開発。ツナ工場も。地元雇用の促進が期待できる。

分離独立は経済が整ってからだ!マライタ州はソロモン諸島の中で一番人口が多い。メラネシア諸国は他の太平洋島嶼国に比べ青年人口の問題が深刻。みんな仕事がなくてホニアラに集まってくるがそれを吸収するキャパがホニアラにはない!

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Wale calls for sacking of Djokovic - Solomon Star News

 首相補佐官で、首相の甥であるRobson Djokovicがオーストラリアで強盗、詐欺、麻薬犯罪をおかし有罪となったことが野党に暴露された。ソロモン諸島の鉱山利権で不正を働いた事。オーストラリア市民権を持っていることなども。

この国の腐敗はもうたくさんだ。首相の権限で解雇せよ、と。

ソガバレ首相、どっかの大統領と似てますね。
Solomon Star がんばっている。米国が背後にいるかもしれない。独立した(といより米国よりの)メディアがいる事は重要だ。

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Push for Self rule - Solomon Star News

出てしまいました。self-determination 「自決権」

中国の賄賂バラマキを背景にソガバレ首相の独断強行で進んだ台湾断交。ソロモン諸島の中でも一番政治的影響力のある反中親台のマライタ州知事が「自決権」を振りかざし、分離独立をさらに匂わせています。

実は「自決権」こそ私の2つ目の博論の理論枠組。で、小国の自決権こそ危ない、怪しいものはないという議論をしていくつもりなんですが、机上の議論と現実の政治は違う!

ここは、日米豪その他民主主義国家は力を合わせマライタ国建設を後押ししようではありませんか!

Independence of Malaita! と叫ぶと確かに血が騒ぐ。

そもそも、小国の独立はソ連のフルシチョフが国連総会の時、靴で机叩きながら(ほんとは靴持ってなかったのですが)米国、西洋諸国につく地域を独立させ米軍の力を弱めようとしたのが目的です。ソ連がフルシチョフが小国の幸せを考えているわけないのは、歴史が教えてくれてますね。(という私はソ連の歴史を知らない!)

脱植民地決議1514号その他関連決議は小国に政治的独立と天然資源を与えるだけで、小国の社会システムを理解していなかった。パラオを見よ。たった2−30名で60万㎢のEEZを守なんで無理。超人を揃えても無理。
そこで日米豪は教育・福祉・法執行分野においてマライタの人々の福祉を優先した支援体制を構築しつつ、その分離独立、自決権、人権を支援しようではありませんか!

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MISSIONARY JAILED - Solomon Star News

ソロモン諸島 台湾断交 と直接関係ないが。。。

ソロモン諸島に入っていたオーストラリア人の宣教師が、未成年4人の女性に性的暴力をふるっていた。4人は宣教師、教会から資金的援助を受けていた。

太平洋島嶼国の宣教師を見てきたが、根本的な社会問題を解決はしていない。もうちょっと突っ込んだ話をするとみんな自国で悩み、問題を抱えて外国に来た感じ。。教会自体の存在意義に疑問を持たざるを得ない。
本件
台湾断交と直接関係ないが、ソロモン諸島の貧しさは中国の資金援助を必要とした要因に繋がっていない、とは言い切れない。

1987年独立。この40年はソロモン諸島にとって混乱と悪化する貧困を導いたのではないか。

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16 Days Activism program launched in Gizo - Solomon Star News

台湾断交とソロモン諸島の女性子供の人権が直接つながるかどうか、と聞かれると少々困るが、「開発」と聞くと海洋資源開発や、鉱山開発ばかり出て来て、人間の開発、そこには弱者を守る開発が全く、もしくは殆ど出て来ないのだ。
ヤップの人権弁護士殺害事件で一瞬表に出たが、気候変動や海洋資源の国際的議論の中で、声をあげられない女性や子供達の存在が、あまりにも痛い。日本にも勿論あるが、それが閉ざされた小さな島社会だともっと闇が深くなる、突き刺さるような痛みに見えるのは何故だろう?

でも日本人含め外国人は中国や台湾の外交の話にならないと関心をもたない。

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Wale queries removal of TTM signboard - Solomon Star News

野党のリーダー、Matthew Waleは台湾の技術支援を受けていたキングジョージ農園の看板を政府が下ろそうとする動きに懸念を示した。

台湾断交に拘らず、台湾は学生達に支援を継続していたのである。
台湾の名前があった看板を下げる行為は北京からの支持で、ソロモン諸島の人々の意志は無視されている。ここは既に中国の所有なのか?

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WHO boss arrives today - Solomon Star News

台湾断交と、これも直接関係ないかもしれないが。。

WHO地域事務所所長の葛西たけし氏がソロモン入り。

ソロモン諸島はチャールズ皇太子は立上げたマラリア対策でわかる通り。その他、島が多く、基本的な医療支援体制ができていない、と思う。
台湾断交でそれが変わるとは思えないが、まずは医療・教育である。米国が真剣になっているようで、日本は米豪を支えるべきだ。

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DCGA announces 2020 major project ‘Bina Harbour placed high commitment’ - Solomon Star News

Democratic Coalition Government for Advancement (DCGA) が、反中姿勢を鮮明にするマライタ州のビナ港の開発を優先すると発表。この港はUSIADー米国の支援で行われる。
また水産はニュージーランドの支援で。他に世銀などの支援も得てマライタの開発が進みそうだ。

ソロモン諸島は隣のバヌアツ同様約百前後の言語と多くの島が有り、人口が急増し都市機能のあるホニアラに集中しているはずだ。マライタ開発は大きな意味を持つ。ここに米国が手を差し伸べたのは100%正解。本来ならば同様の問題を抱えるバヌアツのサント島を開発すべきだが、既に中国の手に落ちている。

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Prince Charles launches 16 Days of Activism campaign - Solomon Star News

 

Prince of Wales to launch Solomons' malaria elimination plan | RNZ News

チャールズ皇太子、赤く染まるソロモン諸島でマラリア対策支援。

Malaita Massacre of 1927 ー 英国植民地時代に虐殺もあったのだ。日本人はその時もうメラネシアに進出していたはず。国際連盟から新渡戸が日本に戻った年。

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Royal Solomon Islands Police Force がチャールズ皇太子お迎えする写真を多く載せている。軍隊がないソロモン諸島。RSISFの創設は1899年に遡る。

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