今度出す本の参考文献をまとめている。
インド太平洋の考古学を理解するのに篠遠博士は外せないが、国分直一さんの本もリストにあげたいとおもった。手元に十冊位ある。
一般の読者が読みやすそうなのが『海上の道』と『北の道 南の道』ではないかと思ってここ数日読んでいる。正当な考古学、民族学で柳田國男批判がやんわりとされている。
『海上の道』は本の題名を柳田から借りて来ました、と書きながら柳田を一切引用していない。新渡戸稲造が読んだら大喜びするであろう。なので民族の問題をイデオロギーで知りたい、語りたい人向けではない。
『北の道 南の道』の覚書の中に「縄文人の思想と言語」という論文が掲載されている。日本語の中にオーストロネシア語が入っていることは崎山理が議論しているのは知っていたが、国分は村山七郎という言語学者がそのことを研究していることを紹介していた。それは国分が考古学の視点で想像していたこと、すなわち氷河期後期、まだ日本海東シナ海が閉ざされて歩いて渡れる頃、縄文人が北上し日本の北部から入って来たのではないか、そのことはアイヌ語にオーストロネシア語の形跡が見られることから証明できる、という論が紹介されている。(もっと複雑で大雑把にまとめた)すなわち、日本語はオーストロネシア語を借りて来たのではなくて日本人がオーストロネシア語族そのものであった可能性を記している。
村山七郎(1908年 - 1995年)という言語学者は知らなかった。
とにかく数千年前の人類の植民を現在の感覚で認識してはダメなのだ。なんせ海洋民族であるオーストロネシア語族は数千キロ離れた仏領ポリネシアから南米まで船で渡ってサツマイモとお嫁さんを持ち帰ってくるダイナミズムなのだから。