2010年北朝鮮の弾道ミサイル対策のために敷設されたHANTRU-1
2017年、パラオ、ヤップも繋がったSEA-US cable
西太平洋における中国の軍事的脅威をいち早く把握していたのは米軍である。2008年キーティング司令官が、太平洋分割案を人民解放軍トップが提案していたことを公聴会で指摘。太平洋司令軍のジェームズ・ファネル大佐は中共が尖閣諸島を侵略することを公開セミナーで話したことで、職を追われた。（キーティング司令官、ファネル大佐の関連動画を下にリンク）
2002年のミクロネシア大統領サミットにはもう一つの情報通信に関する議案がある。Trans-Pacific Fiber Optic Cable ＊だ。2003年、東京で開催されたWSIS世界情報社会サミットで私はこの件を発表しているので、2002年の時点ではまだ極秘だったかもしれない。これこそ、北朝鮮弾道ミサイルに対応するための米軍の海底通信ケーブル敷設事業である。米軍はマーシャル諸島クワジェリンに、レーガン迎撃ミサイル基地を有しているが、衛星通信しかつながっていなかった。衛星による通信は0.5秒の遅延が発生する。グアムからの情報の遅れは致命的でケーブルが必死となった。ケーブルは軍民共用で、マーシャル諸島やミクロネシア連邦の国民が使用できる。
HANTRU-1 (Hannon Armstrong Capital LLC and operator Truestone LLC)という。2010年にクワジェリンからグアムをつなげ、途中にあるマーシャル諸島の首都マジュロとミクロネシア連邦の首都ポナペにもつなげた。 軍民共用だが、ケーブルはしっかり分かれている。
この千載一遇の機会を最大限に生かすため、ミクロネシア連邦とマーシャル諸島は通信制度改革の勢いを加速した。基本的には国内問題でもあるが、ミクロネシア地域の共通課題として、議論が開始した。私は「ユニバーサル・サービス」という概念を提供し、各国の政策議論を後押しした。
結果的に2012年９月にミクロネシア連邦が盟友、フランシス・イティマイ大臣の主導で国家情報通信政策を完成させた。ここにある制度改革が世銀やアジ銀の支援を受け、パラオ、ヤップもケーブルが敷設される基盤となった。SEA-US cableというケーブル敷設事業は日本のNECが請け負った。フィリピンのダバオからパラオ、ヤップを経由し、グアム、ハワイ、カリフォルニアのハモサビーチとつながる。
2000年のG8サミットで披露された日本の情報通信支援案、沖縄IT憲章の15billionUSDは紆余曲折を経て、パラオ、ヤップ、ポナペ、チュック、マジュロの島々をギガバイトの世界をつなげたのである。その背景には北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に反応した米軍の動きもあったが、私はナカムラ大統領、クアルテイ官房長官始め、島の人々のポリティカルウィルが議論され、明確に示された事があったと確信している。これがミクロネシア地域協力の一つの成果だ。
＊ 2002年ミクロネシア大統領サミットコミュニケより
Trans-Pacific Fiber Optic Cable: The Presidents of the FSM and the RMI gave updates on the efforts of their respective countries to bring trans-oceanic fiber optic submarine cable transmission systems to their respective countries and to the region. Both Presidents indicated that they would include Palau in their future discussions with interested international partners. Palau expressed interest and appreciation for such efforts and indicated that they would, upon receiving a final determination on their FCC petition, take a more active role in this national and regional effort. Palau also indicated that a tentative proposal to initiate a fiber optic system from Guam to Yap and Palau was currently being reviewed by the Republic of Palau. Palau further indicated that any successful cable project in Palau would include consideration of Yap's needs for fiber optic cable.
