やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ヤップは大丈夫じゃない!

2012年に谷口智彦さんがWedgeに書かれたので知っている方もいると思うが、中国は第二列島線上にあるヤップ島(ミクロネシア連邦)に手を伸ばしていた。

 

参考  

尖閣諸島とヤップ - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

 

中国企業の攻勢に島の指導者が絡めとられる一方、地元住民が反対運動を展開し、現在は収束しているようだが、中国はそんなに簡単に諦めない。

 

「ヤップは中国の影響がなくなってよかったねえ。」

と言われ、えっ!とんでもない、まだいますよ。と言ったが、状況は刻々と変わるので現地情報を入手した。

 

中国企業はちゃんとヤップに事務所を構え常駐職員もいるのだそうだ。

太平洋島嶼国を渡り歩いて26年。26年近い付き合いのヤップの知人が、実はこの反対運動の中心人物で情報を入手できた。

当方からは知人にパラオがあっという間に中国に飲み込まれてしまった情報を提供した。知人は知らなかった。ヤップにADBが海底通信ケーブルを設置するのは来年だ。情報格差はまだある。

なぜ、ヤップは中国の魔の手を逃れたのに、パラオは一気に飲み込まれたのか?

パラオは中国と外交関係がないが、ミクロネシア連邦はある。ヤップはミクロネシア連邦の一州でしかない。経済的にはパラオより数段遅れている。

なぜか?

皮肉な事にパラオのリーダーシップが、経済的キャパが、中国の進出を自ら招いたのではなかろうか?ヤップも強い伝統的リーダー達がいる。彼等も中国の接待漬けにあったそうだ。しかし、すぐにビジネスには繋がらなかった。島民が強い反対運動を展開した。

 

ヤップとパラオ。歴史・文化的に近い。第二列島線上にあるこの2つの島の比較は今後の海洋安全保障政策に某かの教訓を示してくれるのではないだろうか?