やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

五十嵐元道著「国際信託統治の歴史的起源 帝国から国際組織へ」再読

米国Elihu Root国務長官 Sir Robert Holland

太平洋島嶼国の独立、自決権の歴史を遡る時、信託統治ー委任統治が国際法の新たな構成を成した話は重要だ。Pitman B. Potterの国際連盟下の委任統治制度の起源 Origin of teh system of Mandates under teh League of Nations 1922は外せない資料と思っている。

以前読んだ五十嵐元道氏がホブソンの帝国主義論を分析していたのを思い出して再読した。

五十嵐元道著、「国際信託統治の歴史的起源 帝国から国際組織へ」

Potter論文を名前だけ取り上げられているが、読んでいないのか、必要ないと思われたのか議論されていない。レーニンが参照したホブソンの帝国主義批判は米国Elihu Root国務長官、そして1880年のマドリッド条約にあるのだ。すなわち信託、 Trusteeshipが国際法として形成されていく過程はベルリン会議前後、世界で展開していた。サモアをめぐる条約などもそうだ。領土獲得を優先した19世紀中期の帝国主義への批判は欧州内からあったのである。

五十嵐論文では、Trusteeshipという制度ではなく精神がエドモンド・バークのインド植民への批判にあることを示しているが、Robert Hollandの"Trusteeship Aspiration"では15世紀、既にスペインのイザベル女王が中南米のインディアンに対し表明していることが書かれている。ちなみにアダム・スミスの国富論にもある。

五十嵐論文だけではないが、植民の定義を誰もしていない。植民される側が、外部の力、すなわち植民者を巧みに国内、島内での健力抗争に利用するという歴史的時事実を知れば、話が単純ではないことはわかる。

今度、自民党青年局が訪ねるパラオは、英国のアンテロープ号が1783年座礁した時から、力の弱いコロール付近の酋長たちが英国をバックに北部の今まで威張ってきた酋長をやり込めたのだ。最終的に英国が仲介し、2つの勢力は和解したが、現在もコロールが力を持つのは、ドイツ、日本時代に引き続きコロールが商業政治の中心となったからである。パラオ憲法にはわざわざ首都はBabeldaobに置くこと、と書かれている理由である。

詳細は日本の統治時代に医者として赴任していた戸塚氏が書いた「アイバドルとアルクライ」に詳しい。「島」という柳田が編集した昭和9年の雑誌に掲載されている。

Spaceで以前読み上げました。

2023/3/1

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2023/3/3

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2023/3/8

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2023/3/8

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