やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

楽園の島の汚職・不正

楽園の島は越境犯罪の楽園でもあることは、このブログで繰り返し書いてきた。その越境犯罪を促しているのが島嶼国自身であると書いたら、みなさんは驚くでしょうか?

賄賂、袖の下を要求され、まともな企業は入れない、だから賄賂文化が当たり前の中国企業が入ってきたと聞いている。こういう情報はメディアには書かれないのだ。

しかし国連はしっかり調査している。先日国連の調査を担当することになった友人から照会があったので、古いと言っても2007年の調査報告書を探してみた。

Manuhuia Barcham, PhD. "Corruption in Pacific Islands Countries"
 
2007, Suva, Fiji: UNDP Pacific Centre
 

概要から重要な箇所を抜き書きしておく。

 

人口増加に伴う経済成長の欠如は、この地域における失業率の上昇と苦難の一因となっている。太平洋島嶼国(PICs)の間に蔓延する貧困は、利用可能な資源を圧迫し、農村部から都市部への移住や他の先進国への熟練労働者の移住を悪化させ、経済の存続を脅かしている。主要なミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向け、いくつかの国では進展が見られるものの、今後10年以内に合意された目標を達成できる見込みはない。

 

人々の汚職に対する理解や認識を形成する上で、文化や伝統的な制度との間に複雑な相互関係があり、文化が汚職行為にどのような影響を与えるかということである。

 

「良い」近代的統治システムと「腐敗した」伝統的システムを単純に区別することはできない

 

太平洋全体における汚職のパターンの主な違いは、メラネシアで行われている大規模な鉱物・石油採掘産業に伴う汚職である。資源に乏しいミクロネシアやポリネシアの国々には、メラネシアの鉱物資源や石油採掘産業を悩ませる大規模な汚職の問題はほとんどない。

 

このような伝統的な文化的慣習がどのように汚職につながるかを区別する際には、贈与という慣習そのものが本質的に汚職的なのではなく、むしろ近代国家の構造が、以前には想像もできなかったような権力と富の源泉を提供し、一部のエリートが自らの利益を追求するためにこのような機会を利用する機会を提供してきたことを認める必要がある。

 

鉱山資源のあるメラネシア特有の汚職問題、伝統的贈答文化と汚職の整理。15年前のレポートだが現在にもまだ、不幸にも当てはまるのだろう。中国はこのような状況もよく理解して浸透しているはずだ。