やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

トンガを知る(4) ポリネシアとミクロネシアの交換財と政治形態

オセアニアシリーズの2巻は「伝統に生きる」である。

30年前に読んだ記録が本に書き込まれた傍線でわかるが、ほとんど記憶にない。

吉岡政徳先生のビッグマンの論文にはトンガやハワイの王朝制との違いの検討が必要とまで述べられており興味深い。メラネシアのビッグマン制度はなにやらヤクザ社会のようにも見えてきた。

同じ巻に山本真鳥先生の「ポリネシアとミクロネシアの交換財と政治形態」があったので拝読。

私が手がけた太平洋島嶼国の事業の中に歴史教科書作成がある。太平洋島嶼国は独立を果たした後も、旧宗主国、西洋の歴史を学んでいたのである。または、西洋人が書いた島の歴史を学んでいた。これを島の教師が中心となって自ら歴史を書きましょう、歴史教科書を作成しましょう、という事業であった。

しかし悲しいことに音頭を取ったのはオーストラリア人。そこで事業開始後に日本人の太平洋歴史研究家、何名かに声をかけて会議に参加してもらった。そのお一人が山本先生だ。

結果、日本人研究者が歴史教科書づくりに参加する事はなかった。現場に裨益する研究というのは関心がないらいしい。。

山本先生への批判ではない。念のため。。。

 

この論文には遅れた社会と言われているメラネシアには交換財としての貨幣が存在していたが、進んでいると言われているポリネシアには逆にそれがないこと。ミクロネシアではヤップとパラオに貨幣が存在していることが書かれいる。

貨幣が必要ない社会とは?首長が富を集め、分配する仕組みがあるのだ。トンガである。貨幣としてタパという、樹皮で作った布をあらゆる儀式で収めるタパが富の象徴。私もいくつかもっいた。

それから婚姻の時に豚を送ったり、戦争の和解に籠を送ったり。そういう慣習が国際社会にあれば、と思うが・・

 

ある会議での事。。

パプアニューギニア人「我が村ではお嫁さんと豚を交換します。」

西洋人「なんて酷い!」

私「日本は乾燥わかめとか乾燥魚とお嫁さんを交換します。」

西洋人「信じられないわ!酷い、酷い、酷い!」

パプアニューギニア人と私「ニヤニヤ」

 

マーケットエコノミーではないのだよ。逆に西洋社会でそのような伝統経済が消えてしまった理由を知りたい。そういえば、お土産文化が通じるのは太平洋島嶼国で、西洋社会ではどんな下心があるのか?と疑われる。