やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

第13回ミクロネシア首長サミット開催される

第13回ミクロネシア首長サミット開催される

 

 2010年6月23日から25日、サイパンにおいて第13回ミクロネシア首長サミットが開催される。協議内容は地域のエネルギー、運輸、リサイクル、観光、健康、外来種対策等と幅広い。参加国はミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)と米領のグアム、北マリアナ諸島。そしてミクロネシア連邦の4州の知事と、計9つの首長が集まる。

  戦後、国連信託統治から政治的自立の道を模索したミクロネシア地域は、当初一つの国、ミクロネシア連邦として独立するシナリオがあった。しかし、各島の思惑の違いから、米領に留まった北マリアナ諸島とグアム、米国の軍事アクセスを許す代わりに経済支援を受けるという自由連合協定を締結したミクロネシアの3つの独立国の5つの政治単位に別れた。

  しかし、2000年当たりからパラオ共和国の主導により、袂を分かったミクロネシアの5つの島々がまとまる動きを見せている。即ちミクロネシア地域協力が形成されつつあるのだ。現在はミクロネシア独立3国の大統領サミットが年1回、9つ政治単位の首長サミットが年2回開催されている。

  今回のサミット2日目にはグアムへの海兵隊移転へ向けた経済的影響について協議される予定だ。国内産業が乏しいミクロネシア地域ではグアムへの出稼ぎが多く、基地拡大はチャンスでもある。また、海兵隊とその家族の保養先として、各島の観光産業への期待も大きい。同時に島の脆弱な社会、環境への影響も懸念されている。

  このミクロネシア地域協力の背景には、自由連合協定交渉等の対米国政策に団結して取り組もうとする一面と、英連邦色が強く豪・NZの影響力が強い南太平洋島嶼国とは一線を引きたい、とするミクロネシア地域の思いがある。つまり、日本が参加しやすい枠組みなのだ。同じ北太平洋の海を共有し、島国である日本。特に沖縄や東京の県、NGOレベルの参加を今後に期待したい。

  さらに私が進めるミクロネシアの海上保安案件に絡めて語るならば、ミクロネシア3カ国大統領サミットが進める地域協力の枠組みの流れ(特にニウエ協定、ナウル条約)にうまく合流することができた。そして、この地域協力の枠組みは私が渡辺昭夫先生のアドバイスを受けながら策定した笹川太平洋島嶼国基金第2次プログラムガイドライン(1999~2008)が働きかけてきた成果でもある。