やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

自由連合とは何か?

自由連合とは何か?

 現在、マーシャル諸島ミクロネシア連邦パラオ共和国クック諸島、ニウエが自由連合協定を夫々米国、ニュージーランドと締結している。

 この自由連合は何か? 資料はあまりなく、矢崎幸生著『ミクロネシア信託統治の研究』(お茶の水書房、1999年)が簡潔で詳しいと思うので下記にまとめたい。

 自由連合という政治的地位は1953年国連決議の付属文書で取り上げられ、1960年の同じく国連決議付属文書でその意義と形態が明確にされた。矢崎は国際連合による自由連合承認条件を下記の5つに整理・集約している。

1. この地位は、その地域の住民により、自由に選択されたものでなければならない。

2. 自由連合の条件は、当事国を拘束する書式により、明確にかつ完全なものとして定められていなければならない。

3. 連合した地域は、内政自治の実質的な権限を持たなければならない。

4. 連合の政体を受け入れる国家に委託された権限(通常は外交、防衛権)は、連合国の内政に干渉する実質的な自由裁量を含むものであってはならない。

5. 次の内容を含む自由連合協定の終了手続が定められていなければならない。

― 連合を受け入れる国の政府と連合国の双方に取って用意に実施できる終了手続手続であること。

― 連合国人民の、継続した自治権の表明と見なし得る終了手続であること。

 1901年にニュージーランドの属領であったクック諸島がこの政治的地位を選択し「1965年クック諸島憲法修正法」でニュージーランドに「外交及び防衛の責任を遂行すること」を要請。国際連合基準に基づく初めての自由連合国となった。続いて1974年ニウエがニュージーランドの属領から自由連合国となった。

 ミクロネシア3国は米国が管理する国連信託統治から1986年にマーシャル諸島ミクロネシア連邦が、そして1994年にパラオが米国と自由連合国協定を締結した。

 ニウエ、クック諸島は独立国家としての扱いを受けていない。国連の正式メンバーでもない。市民権はニュージーランドにあり国家元首は英国女王である。

 他方、ミクロネシア3国は独立国として国際社会に認められている。矢崎はミクロネシア3国の場合、市民権は米国になく、自国の国家元首があり、ある程度の外交処理能力を有しているからであろう、と考察している。

 

 今年、日本政府がクック諸島を国家承認した。クック諸島の法的地位が変更したわけではないので、政治的判断であると思う。加えて来年の太平洋島サミットの共同議長が偶々クック諸島首相あることへの配慮もあるのかもしれない。

 戦後、信託統治後の政治的地位としてミクロネシア側が「自由連合」を望んだと言う。しかし今ミクロネシア自由連合協定が揺れている。ミクロネシア連邦だけでなくパラオも米国からの援助に頼るのをいい加減止めたい、と言っている。ニウエ、クック諸島と違いミクロネシア3国の自由連合協定は「米国の」安全保障上の戦略的位置にあることが背景要因だ。

 島嶼国の、小国の「真の独立」とは、即ち、私達が好ましいと思わないシーシェパード等の民間組織や、問題があると思える他の国家との連携が強まる可能性が高くなる、ということでもある。太平洋の海洋安全保障が日本や米国の安全保障につながっている、と考えるのであればここは早く手を打つ必要があるのではないか。

 やっぱりキャンベル国務次官補と早く話しをした方がいい。