やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミクロネシアに展開するUSCG

ミクロネシアに展開するUSCG

 2010年6月23ー25日ミクロネシア首長サミットがサイパンで開催された。同地域で展開するUSCG(米国沿岸警備隊)の活動について、グアムセクターのCommander、Thomas McK Sparksキャプテンが招かれ発表。 Sparksキャプテンは2009年に実施した鷲頭ミッションのパラオ調査に参加。この6月のグアム会議にも参加している。

 グアムおよびミクロネシアにおけるUSCGの歴史、ミッション、機能、設備、最近のミクロネシアでの活動につて発表。同サミットでUSCGの発表を得るのは初めてのことだ。USCGは米領グアムだけではなくミクロネシア3国も責任範囲であることが明言された。また、椰子の木、亀のモチーフ等を使用した新しいグアムセクターのロゴを発表。やはりシンボル、即ちアイデンティティは重要なのだ。

 Sparksキャプテンは外交的面も見せ「個人的にはUSCG Guam Sector ではなくMicronesia Sectorに変更したいんですけどね。」とコメントし、首長始め参加者たちから大いに受けていた。

 グアムのUSCGは拡張しないが、今後劇的に拡張する海軍との協力関係を強化していく、とのこと。ここは海保と海自のラインが明確な日本とは違うところだ。

 冷戦終結後はUSCG始め米国の太平洋島嶼国への対応が手薄になっていたが、9.11以降ミクロネシアのみならず南太平洋を含め、米国の態度が変化してきたことは以前述べたように覚えている。ハイチ地震で中止となったがクリントン長官の豪、NZ、太平洋島嶼国(PNG)訪問もそのことを象徴しているだろう。

 

 今回のサミットになぜUSCGを招いたのか、FSMの議員に聞いてみた。

 沖縄海兵隊移転があろうがなかろうがグアム基地拡張は進んでいる。それと共に各種連邦政府機関がグアムに配置される。そこで、ミクロネシア3国は米国がセキュリティを含め、3カ国への支援を強化するよう自由連合協定の見直しを求めて行く方向だ、という。USCGも基地拡張に伴い活発化しているので招待した、ということだ。

 グアムの基地拡張を沖縄からの視点だけで見てはいけないのだ。

 

 USCGグアムセクターは、2006年からSea Guardian Exerciseを実施している。今年、2010年4月17-26日、ポナペで開催されたSea Guardian Exerciseは違法操業、越境犯罪の模擬ケースによる訓練だった。参加者は下記の通り。

FSM Department of Justice

National Police

Transnational Crime Unit (TCU)

Supreme Court

Office of the Attorney General

FSS (FSM Ship) Independence (Palikir, Micronesia)

 他にもポナペの病院や赤十字におもちゃをプレゼントしたり、小学校との交流などアウトリーチの活動も積極的に行っている。

 余談だが、Sparksキャプテンの奥様は日本人。会う度に一所懸命、日本語で話しかけてくれる。また、パラオでもサイパンでも夕方マラソンをしている姿を目撃。出張中も訓練を欠かさない人に守られているミクロネシアは幸せだと思った。

(文責 早川理恵子)