3月2日の米上院外交委員会で、クリントン長官がパプアニューギニアとフィジーの例を出して、太平洋島嶼国における中国の脅威を言及。
この発言の背景には国務省予算の外交、海外援助活動等を16%削減という懸念がある。
パプアニューギニアに関しては、その天然資源を巡り、現在同国に於いて主要な地位を占める米国エクソンモービルが、中国からの脅威にあること。
フィジーに関しては、バイニマラマ軍事政権が中国からの支援を受けていること、を夫々述べている。
さらに、米国の撤退が、中国、ロシア、アルジャジーラ等に「情報戦争」へ参加する扉を開いた、とも述べている。
さて、クリントン長官の発言があった3日後、3月5日に中国政府の「海洋発展戦略」が発表された。タイミングが良過ぎる。報道では尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海などで海洋権益確保の動きを強化する内容のようだ。
中国軍艦が太平洋にも衛星追跡等の名目で進出していることは周知の事実だ。
以下愚見。
米豪との協力関係を強化しつつ進めようとしているミクロネシア海域の海上警備強化支援事業が、クリントン長官からも、豪州政府からも歓迎される理由はここにもある。「中国の脅威」は各国共通の懸念である。
「海洋発展戦略」に関し、中国の海洋問題に対する動向を「もっと大きな流れの中できちんと受け止めるべき」ともある。
日本側から米豪に働きかける要素として、太平洋の海洋安全保障は「一義的にはlaw enforcementで」ということだ。ここに、世界に誇る海上保安庁を有する日本の立場がある。
”非伝統的”、”非対称的”、”多角的”安全保障に対峙するため、米国はUSCGだし、豪州も太平洋の海洋安全保障を海軍から国境警備隊に移行する動きがある。
しかし、これらの動きは軍事力を排除する、というものではない。これは今回のキャンベラ出張で明確になったのだが豪州政府は国の海洋安全保障アセットを統合的に活用する、即ちwarshipをlawshipとして活用する、という方法を取ってる。
この辺りのことについては、私が今年度から開始した「海洋安全保障の新秩序構築研究会」で議論される、と思うのでいつの日かまとめてみたい。
<参考資料>
中央日報:クリントン長官、本音発言? 北朝鮮を支援する中国「現実政治」
Reuters: Clinton says China seeks to outflank Exxon in Papua
Yomiuri Online: 中国新5か年計画、「海洋発展戦略」制定へ
渡辺昭夫著「冷戦の終結と日米安保の再定義 ― 沖縄問題を含めて」