5月31日、豪州の安全保障研究機関、Australian Strategic Policy Instituteから、豪州が過去30年近く実施してきたPacific Patrol Boat Programの今後の提言を含んだ報告書が発表された。
執筆者のベルギン博士によれば、2009年、現在PPBPを担当している豪州国防省は同事業を国境警備局に移管する意向で、同局内にタスクフォースを設置。しかしながら3年近くたった今、何の成果もなく、豪州政府からASPIにこの報告書の作成依頼があったとのことである。
ベルギン博士は、昨年私が立ち上げた「海洋安全保障の新秩序構築研究会」の委員でもある。
報告書には、日本は太平洋から漁業資源など大きな利益を得ているにも拘らず、海洋安全保障に関する活動を何もしてこなかったが、2008年になって私がはじめて動き出したこと。また将来の島嶼国への支援はPPBのような大型艇ではなく、沿岸警備用の小型艇を提案。モデルケースとしての小型艇支援が上げられている。大型艇は地域共有とし、効率的な運営を提案。
同報告書では、日本の海上保安庁の例を挙げ、趨向として海洋安全保障が多様な場面に対応しなければならない事から、軍事よりもCivil Lawが中心となるべきではある。しかしながら豪州の場合、戦略的・外交的政策は、豪州国境警備局ではなく、太平洋での経験も実績もある豪州国防省が引き続きイニシアチブを取るべき、と主張。
海洋安全保障のための「地域調整センター」は2008年のベルギンレポートで提案されたものだが、本レポートでも、多様な海洋安全保障に対処する同センターの必要性が強調されている。
"Strategic Insights 52 - Staying the course: Australia and maritime security in the South Pacific"