やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「海洋安全保障の新秩序構築」第2回国際研究会を終えて

「海洋安全保障の新秩序構築」第2回国際研究会を終えて

 昨年度から始まった『海洋安全保障の新秩序構築』研究会の第2回国際会議が先週東京で開催された。

 日米豪を中心にメンバーを集め粛々とすすめられて来た。初回の国際会議には外国人委員が2名しか参加できなかったの対し、今回は11名の海洋安全保障の専門家が集合。

 IMOからは関水事務局長始め幹部の参加をいただき、米国沿岸警備隊からは4名、米軍関係者、オーストラリアからは元国会議員や海洋・国防関係者、英国からは海洋安全保障の国際法専門家、と海洋安全保障の現場を知る人、アカデミック、行政と広くカバーした面々になった。

 朝の9時から夕方6時までぶっ通しの会議の内容をまとめる器量はない。が、改めてミクロネシア海上保安案件を「百の議論より一の行動」で始めた事が正しい、実感した会議であった。

 海洋安全保障の議論は百家争鳴。未来永劫平行線。全員が納得のいく結論が出る可能性は微塵ともない。

 「ミクロネシア海保」案件を議論から始めていたら、何も進まなかったであろう。

 百の議論をすっ飛ばして始めたミクロネシア海上保安事業を進めるにあたり、国内関係者から「異論反論オブジェクション」も聞こえてきた。やっぱり議論も必要、と当方から羽生会長に勉強会開催を提案した事に始まる(と理解している)。それがあっと言う間に国際研究会に変わってしまった。

 相変わらず羽生会長の発想は大胆である。

 

 会議終了後、多くの感想が聞けた。沿岸警備隊のない豪州国防関係者が米国沿岸警備隊と接する機会は少ないようだ。「戦争」を前提としている軍隊と比較し、USCGが海洋資源やら、人口問題を語っている事が印象的だったという。米国沿岸警備隊も海洋安全保障が多角的に議論された事に多くを学んだと言う。

 これこそ、枠の緩い変幻自在の民間NGOが、枠にギチギチにはめ込まれているお役所仕事に新たな視点を導く役割を示した例に外ならない。

 当方からは私見として、渡辺昭夫先生が書いた樋口レポート(94年)、それに反応したナイレポート(95年)を示し(*)、日本の安全保障体制を、即ち日米同盟をどうするか、というアジェンダも同研究会の背景にある事を会議後の鍋を囲みながら話させていただいた。

『日米の戦略対話が始まった』(秋山昌廣著、亜紀書房、2002年)に詳しい。