やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『オキナワ論』ロバート・D・エルドリッヂ著

ひさしぶりの沖縄訪問を控えロバート・D・エルドリッヂ博士の『オキナワ論』を読んだ。

 

2008年、ミクロネシアの海上保安事業を立ち上げ、本格的に太平洋の海洋安全保障をやる事になったが、海洋問題を扱うのは初めての事であった。

海洋安全保障の研究会を開催する事を提案し、実行したのは自分である。

まずは自分が、海洋問題を、日米同盟を、学ばなければならない。

ミクロネシア諸国の安全保障となれば、米国、豪州の理解も得る必要があり、両国の安全保障関係者にも委員になっていただいた。米国沿岸警備隊もオブザーバー参加をした。

 

日本の委員で候補に上がったのがロバート・D・エルドリッヂ博士であった。しかし、2009年博士はちょうど米軍の職を得たところで、参加は難しいとの回答であった。

しかし、私はエルドリッヂ氏の博士論文『沖縄問題の起源―戦後日米関係における沖縄1945‐1952』を読む機会を得たのである。難しい本だが、ミクロネシアの安全保障を理解するのに最適の内容で一機に読み得た事を覚えている。

 ミクロネシアの安全保障と沖縄の安全保障は、戦後の米国の太平洋地域の政策として繋がっているのだ。

沖縄も、日本に返還されていなければ米国の信託統治を経て、自由連合協定を米国と締結し独立していた可能性がなきにしもあらず。しかし、日本からの補助金は得られず全く違った社会、即ち現在のミクロネシア諸国のように(米ドル、米国式の教育、etc.)なったかもしれない。

 

『オキナワ論』はエルドッヂ博士の熱い思いが詰まっている。

委員にはなっていただけなかったが、同じような思いで日米同盟を考えていらした事を知った。

日本が米国の安全保障管理下にあるミクロネシアの海上保安に乗り出した事を一番喜んだのは米国なのである。

米国は日本を、この広い太平洋で必要としているのだ。

豪州の努力は尊敬するが、彼等にはそのキャパシティがない。

 

『オキナワ論』には沖縄メディアの批判が書かれている。

私は、宮古島八重山諸島のジャーナリストと太平洋島嶼国のジャーナリストの交流を行っていた。グアムの知事やミクロネシアの政治指導者にインタビューした際、喉から手が出るほど米軍に来て欲しい、戻ってきて欲しい、と述べていた事がショックだったようだ。

それほど、軍隊は悪者、というイメージが沖縄の人々には、イヤ日本人一般に浸透しているのではなかろうか?

私もそうであったし、安全保障の事業を8年やって、防衛関係者を知る機会を得た今でも軍人に対する抵抗感がある事は否定しない。他方年間数千人の米軍兵士が自殺しているという事実を知った時、周りの家族の様子を想像し感覚が変わった事も事実だ。

 

 

エルドリッヂ博士は元々はJETプログラムで来日したという。

日米関係は軍事的な側面だけでなく、多様な関係がある。

ミクロネシアの支援体制を日米協力で構築する、というのも一つのアイデアではなかろうか?

昨年末、米軍が1952年から継続しているクリスマスドロップ(下記の記事参照)に、初めて日豪が参加したようである。

このクリスマスプレゼントを投下する離島との短波通信を可能にしたのは私が進めて来た情報通信事業なのだ。そう、私は25年間、太平洋島嶼国支援を日米同盟と結びつけて行ってきたのである。

 

「グアム・アンダーセン基地で第64回「クリスマス・ドロップ作戦」開始式」

http://www.yokota.af.mil/shared/media/document/AFD-151207-032.pdf