(この文章をアップした後、グリーンピースの花岡和佳男さんに電話インタビューできたので最初の原稿から若干修正しました。2012/2/16 14:14 JT)
2011年9月から“Defending our Pacific ship tour 2011”キャンペーンを展開しているグリーンピース。太平洋の漁業資源保護活動を活発に行っていることは断片的にニュースやウェッブの資料で気付いていたが全体像がまだ見えない。
”グリーンピース”というと日本では、アレルギーが強いかもしれない。そういう私も一歩置いている。
豪州、ニュージーランドには緑の党もあり、環境NGOへのアレルギーは日本程ではないようだし、政治への影響力も無視できない。
ニュージーランドでは1985年フランス政府によるテロ行為で反核運動中のグリーンピースのカメラマンが命を落としている。グリーンピースは英雄的存在だとも聞いた事がある。
たまに過激な行動を取るようだが、シーシェパード程暴力的ではないようだ。ニュージーランドの緑の党関係者にインタビューしたところ、グリーンピースはアカウンタビリティがある、という事だった。またWCPFCの会議にはNZ政府代表団の中にグリーンピースのメンバーが入っていることもあるそうだ。
<Pacific Commons>
2008年ミクロネシアの海上保安事業が立ち上がった際、ニウエ条約やナウル協定と言った関連事項を調べていたら、同年10月に国連大学でグリーンピース主催の「国際海洋環境シンポジウム」が開催される事を知った。
テーマが「海から魚が消える?私達が今できること」。どこかで聞いたようなフレーズだ。シンポジウム参加者もコロンビア大学教授のダニエル・ポーリー博士や小松正之氏などそうそうたる顔ぶれである。
シンポジウムに参加はできなかったが、ナウル条約の資料は非常に参考になった。
ナウル協定とは何か。
太平洋島嶼国全てが均等に漁業資源を保有しているわけでもない。マグロも赤道の南北30度の範囲を中心に泳ぎ回っているらしい。それで、FFAの中でももっと積極的に漁業資源管理をしたい国が集まった。これがナウル協定メンバー国だ。
それではどのように管理するのか。グリーンピースが提案するのが”Pacific Commons” 。EEZに囲まれたポケット状の公海が太平洋には4つある。ここを保護区にしようという案だ。激減する漁業資源を守り未来に魚を残すことが目的だ。
この提案を受け、ナウル協定メンバー国(the Parties to the Nauru Agreement ー 通常PNAと記される。) が2010年1月から2011年12月まで2つの公海ポケットを保護区とした。このPNAの決定をWCPFCが後から承認している。
つまりグリーンピースがPNA, WCPFCの国際組織を動かした形だ。イヤ、グロティウスの「自由海論」を、UNCLOSの公海の自由の原則を動かした、とも言えるのではないだろうか?
この保護区制定は当然太平洋で漁業をするフィリピン等から反対の声が上がり、現在ロビー活動が展開されている、という。
<NGOが活躍する太平洋の海洋保護>
2008年の第8回ミクロネシア大統領サミットで我々の活動が承認された直後、パラオ政府を訪ねた。副大統領との面談で「NGOの協力は歓迎である。既にグリーンピースからも航空機による海洋監視の提案が出ており検討している」という話しがあった。
豪州政府が島嶼国に監視艇を供与するPacific Patrol Boat Program。約30年の実績がある。しかし、島嶼国が燃料費を賄えないことや、修理ができない事等から、効果的に活用されておらず、豪州政府は現在プログラム見直しを行っている。
見直し案として、太平洋島嶼国の海洋管理機能+豪州米国NZフランスのQuad機能(FFA)+グリーンピースや笹川平和財団等のNGOの機能、これらすべてを統合した太平洋の海洋管理体制を示した資料を見せてもらった事がある。豪州政府もグリーンピースの活動を評価している、と理解してよいだろう。
島嶼国だけでは到底管理できない広大な太平洋。米豪NZ仏のクアド協力でも足りないのだ。NGOでも個人でも支援してくれるという全てのキャパシティを取り込もう、というアイデアだった。これらの調整をするのがコーディネーションセンターだ。
日本財団と笹川平和財団が進めるミクロネシアの海上保安事業はまだ支援が決まっていない段階から、関係国機関に衝撃を与えた。豪州政府がPPBPを継続(形を変えて)する事にしたのは、我々の動きに反応したからだ。キャンベル国務次官補がアイランドホッピングしたのも米国が我々の活動に刺激されてだと、私は思っている。もしくは米国の一部の人が我々の活動を外圧として利用しワシントンを動かしたのだ。
当分は太平洋の海洋安全保障は漁業資源管理が中心となるのだろう。大国と小国の利害関係、漁業資源保有国と漁業実施国との利害関係等々、国家間の関係は複雑で微妙だ。だからこそフレキシビリティと目的意識が高いNGOの役割や期待は大きい。
グリーンピースの活動は時に過激に見えるが、同じNGOのとして夫々の得意分野を活かした協力が必要になって来るのではないか。
“Defending our Pacific ship tour ”は今回が初めてではなく、過去にも実施されてきたし、今後も続くそうである。