やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ジョージ・ツポウ5世(4)- 国葬参列

 

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 2012年3月27日、トンガで行われたジョージ・ツポウ5世の国葬に急遽参列させていただく事となった。

 国葬を取り仕切る新国王ツポウ6世のご判断で、経済的影響を最小限にするため28日に予定していた国葬は一日切り上げ27日になった。

 こんな急な日程では外国から、特に日本の皇室からの参加はないであろうと思っていたが、23日閣議決定で常陸宮ご夫妻が参加されることとなった。日本の皇室も政府もトンガ王室、トンガ政府との関係を重視している証拠である。

 今回はサモアから大酋長のTuiatua Tupua Tamasese Efiご夫妻が参加されたので、常陸宮はその次の順列であったが、国王らが臨席するテントに座られた。

 

<オバマ大統領代理団、胡錦濤国家主席代理団>

 その他の外国から来賓、政府代表団にはその隣にテントに席が設けられていた。急な日程の変更で来られなくなった人が多かったようだが、それでも200人はいた。

 気がついたら、回りはオバマ大統領代理団、胡錦濤国家主席代理団である。政治的経済的覇権国も伝統的権威の前には笹川平和財団と同列なのだ。(!)

  香港で亡くなられた国王は、中国政府が用意したチャーター便で26日にトンガに戻られた。そのチャーター便には香港訪問に同行されていた新国王ツポウ6世と駆けつけた王室の方々、そして中国胡錦濤国家主席代理団12名が同乗されていた。

  オバマ大統領代理団はなんと一昨年パラオの会議に参加いただいたフランキー・リード国務副次官補(東アジア・太平洋担当、現在はフィジーの米国大使)、内務省離島問題事務局のトニー・ババウタ事務次官、Lieutenant General Duane D. Thiessen, Commander of the United States Marine Corps Forces Pacificの3名であった。他にも制服組が10名程いた。

 米国の太平洋重視を実感した顔ぶれであった。

 

<ツポウ5世の人気>

 空港到着すぐにVIP待遇をいただいて、大蔵省の職員がずっと添乗してくださった。日帰りトンガ訪問だったので、本当はどこかで横になりたかったがそれも叶わず。

 大蔵省職員は、私がツポウ5世の日本訪問時に築地へ行った話や、トンガの私邸に招かれた話、オークランドで刺身をご一緒した話など、トンガ国民が知りえない話だったらしく興味深く聞いてくださった。

 トンガの独立を守り、トンガ国民から愛されるトンガ王室ではあるが、一時ツポウ5世への批判が高まった時期があった。そのことをそれとなく聞いてみたら「ツポウ5世は国王になられてから大きく変わった。今まで独裁運営をしていたビジネスから手を引いて、国民に歩み寄るようになった。離島を全て回り、村の集会に参加し、難病の子供を自ら見舞う行為は人々の支持を得た。それに18歳までの無料義務教育を提唱したスピーチは国民から賛同を得て、現在教育省はその方向に変わるよう、作業をしている。」

 国民に歩み寄る姿は、日本の皇室の姿を参考にされたのではないか?

 兎にも角にも「お出迎係」としてはツポウ5世が最後は国民に愛されて亡くなられた事が何よりも嬉しかった。しかも民主化という大きな政治改革まで成し遂げられたのだ。

 

<国葬の場が外交の場に>

 国葬に参加された外国から来賓、政府代表団は、国葬終了後、トンガ政府の要人との面談や会食が次々とセットされていた。国葬とはまさに外交の場である。

 私もがんばって米国のリード大使やババウタ事務次官らとミクロネシア海上保安事業の話をし、南太平洋大学学長とUSPNetの話をした。それよりも添乗いただいた大蔵省の職員がトンガの国家予算を実際に作成する省内ナンバー2である事がわかった。彼女と4時間ほどいっしょに過ごした「日付変更線ホテル」のロビーで、トンガ国家予算に一機に詳しくなってしまった。